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「日本はいい国だと」特定技能のミャンマー人が涙の訴え、北海道の農場で「毎日のように暴行受けた」
虐待の告発会見では、従業員らが嗚咽にむせぶ場面があった(8月21日午前/札幌市内)=画像の一部加工は筆者

「日本はいい国だと」特定技能のミャンマー人が涙の訴え、北海道の農場で「毎日のように暴行受けた」

「日本はとてもいい国で、会社の人もきっといい人だと思っていた」

そんな期待を胸に来日したミャンマー人たちが、北海道の農場で働き始めた後、暴言や暴力、セクハラなどを日常的に受けたと訴えている。

被害を訴えるミャンマー人従業員らは8月下旬までに地元の労働組合の支援を受けて農場を離れ、札幌市内で記者会見を開いた。

出入国在留管理局に調査を求めたほか、暴行を受けたとする男性は8月24日、警察に告訴状を提出。農場を経営する法人に団体交渉への対応や待遇の改善、謝罪などを求めている。

従業員たちは「いつ怒られるかわからなかった」と語る。(ライター・小笠原淳)

●女性従業員「来る日も来る日も叩かれた」

画像タイトル ミャンマー人従業員たちが寝泊まりしていた寮=従業員提供

問題が指摘されているのは、羊蹄山の湧き水「京極の水」などで知られる後志管内京極町にある農場だ。

8月21日に開かれた記者会見で、農場を離れた従業員らは、実質的に経営に携わっているとする人物らから、ほぼ毎日のように暴言や暴力を受けたほか、女性に対するセクハラが疑われる行為もあったと訴えた。

会社から与えられた寮での生活環境にも問題があったという。

今年5月から働き始めたという女性は「入ってすぐに叩かれ、びっくりした。来る日も来る日も、作業のたびに叩かれた」と証言した。

「トマトのハウスで作業しているとき、やってもいないミスで暴言を吐かれたり、胸の上の方を小突かれたりした。お尻を叩かれたりもした」

日常的に暴行を受けていたという男性も「いつ怒られるかわからなかった」と振り返った。

「『社長』や『専務』は尋常ではない怒り方で、何をしたら怒るのかもよくわからない。棒で叩いたり、追いかけまわしたり、殴る、蹴る、首を締めるといった暴行が毎日のようにあった。女性に対してはすぐに触る傾向があり、怒っても怒らなくても体を触っていた」

生活の場だった寮についても、別の女性がこう証言した。

「空港に迎えに来た車の中で『寮は綺麗に使うこと。壊したりしたら弁償』と言われたが、実際は2つあるトイレのうち1つは紙が詰まっていて使えなかった。もう1つも汚くて使えなかったので自分たちで掃除した。

冷蔵庫や炊飯器もカビだらけで、やはり掃除しないと使えなかった。最初の1週間あまりはガスも通っていなかった。部屋は2人1室の相部屋で、布団2枚がやっと敷ける広さ。家賃は毎月2万円だった」

●労働組合「暴力をやめるよう求めるのは初めて」

画像タイトル 左から、従業員らの保護にあたった札幌地域労組の鈴木一顧問、同じく三苫文靖事務局長、小野寺信勝弁護士

農場では「特定技能」の在留資格を持つミャンマー国籍の男女30人あまりが働いていたという。

今回の記者会見に参加したのは、農場を離れた10代から30代の男性2人、女性4人の計6人。このほかにも自力で逃げ出した人がおり、支援側は現在も20人ほどが働いている可能性があるとしている。

札幌地域労働組合は別の支援団体を通じて従業員らの訴えを知り、会見当日までに6人を農場から離れさせ、協力関係にある札幌市内の教会で保護した。

これに先立つ8月4日には、札幌出入国在留管理局に状況を伝え、必要な調査と適切な措置を求めた。さらに会見3日後の8月24日には、とりわけ激しい暴行を受けたと訴える男性について、北海道警倶知安(くっちゃん)署に告訴状を提出した。

会見に同席した地域労組の鈴木一顧問は「労組として『暴力』を問題にするのは初めて」と呆れる。

「賃金未払いとか不当労働行為とかで団体交渉を申し入れることはあるが、暴力をやめるよう求めなくてはならないのは初めてのこと。ミャンマーの人たちが日本人を嫌いになったとしても、もっともなことだと思う。

私たちの暮らしというのは、外国人労働者がいないと成り立たない。それなのにこんなことをしているようでは、もう誰も日本に来てくれなくなる。彼らの人権を守ることは、つまり私たちの社会を守ることだ」

画像タイトル 告訴状を提出する従業員ら

●過去にも「技能実習計画」の認定取り消しか

被害を訴える従業員や地域労組によると、農場の運営に中心的に関わっているのは、京極町議をつとめる男性と、その息子2人だという。

この町議らが当時経営に関わっていた農場の運営法人は2022年3月、「技能実習生の人権を著しく侵害した」として、入管庁と厚生労働省から技能実習計画の認定を取り消されている。

日程を取り消された実習実施者は、原則として取り消しから5年間、新たな実習生の受け入れを認められなくなる決まりだ。

地域労組によると、ところが、すぐに別の農業法人が設立され、今回被害を訴えているミャンマー人従業者らはこの法人のもとで働いていたという。

さらに、この法人は特定技能外国人の就労を支える「登録支援機関」も兼ねている。従業員が勤務先で被害を訴えた場合に、本来期待される支援が十分に機能する仕組みになっていないのではという問題もある。

告発会見に先立ち、地域労組は農業法人に要求書を提出した。暴力など従業員側が問題としている行為の即時停止や被害を訴える従業員への謝罪、未払い賃金がある場合の清算などを要求。あわせて団体交渉に応じるよう申し入れ、8月28日までに回答するよう求めている。

●「ミャンマーを出る前は希望に満ちていた」

会見では、被害を訴える男性の1人が、来日前のことを振り返った。

「ミャンマーを出る前は希望に満ちていた。家族には『日本はとてもいい国で、会社の人もきっといい人』と伝えていた」

その言葉を聞き、ほかの従業員たちが一斉に涙を拭い、嗚咽を漏らす一幕があった。

別の女性は「もう日本で働く勇気がなくなる気持ちだった」と打ち明けた。一方で、支援者らと出会ったことで気持ちに変化も生まれたという。

「心を立て直して、また働きたい。次の職場にはやさしい人がいてほしい」

従業員側が農場の実質的な経営者だとしている町議は、筆者の問いかけに「取材はお断りしている」と述べた。

町議の長男とみられる男性にも取材を申し入れたところ、「収穫が忙しくてコメントどころではない」と述べた。従業員らが訴えている暴行などについて具体的な説明は得られなかった。

また、支援者から情報提供を受けたとされる札幌出入国在留管理局は「要請を受けたかどうかも含め、個別の事案についてはお答えできない」としている。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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