2019年09月17日 11時47分

LINEを活用、教職員の新しい「労働組合」が発足 「体が壊れる前につながって」校長と交渉も

出口絢 出口絢
LINEを活用、教職員の新しい「労働組合」が発足 「体が壊れる前につながって」校長と交渉も
関東教職員ネット労働組合のHP

「私たちは、まったく新しい教職員のための労働組合を7月に設立しました」。LINEを活用した「関東教職員ネット労働組合」が9月1日から組合員を募集している。取り扱うのは労働問題のみ。LINEで悩み相談を受けつけ、校長への改善要求も行うという。

組合を立ち上げたのは、関東の元小学校教員(30代男性)と現役の小学校教員(60代男性)、現役の中学校教員(30代女性)の3人だ。3人は共通する思いを持っていた。勤務校で働き方に関する問題があっても、声を上げると職場で孤立してしまう。だから、結局何もできないまま。新たに組合を作れば、そんな現状に風穴を開けられるかもしれないーー。

「実際に長時間労働で苦しんでいる方は、自分の体が壊れる前に我々を頼ってほしい」。元小学校教員で執行委員長の佐野さんはそう期待を込める。(編集部・出口絢)

●1年目で「こんな働き方はおかしい」

佐野さんは2011年4月、小学校教員になった。一人でこなせないほどの仕事を振られ、平日は午前7時半〜午後10時ごろまで働き、休日もどちらかは丸1日働いた。タイムカードもなく、1年目から「こんな働き方はおかしい」と違和感を持った。

授業準備など子どもに関わることは負担ではなかったが、教育委員会に提出する調査報告書や会計処理など事務的な仕事をどんどん振られた。

職員会議では「休憩時間に会議を入れるのはおかしい」と訴えた。しかし、周りの教員は見て見ぬ振り。「現実的に無理だろう」、「あの人はおかしい」。そんな目で見られ、孤立感を深めた。会議が終わった後、こっそり「あなたが言っていることは正しい」と言ってくれる人はいたが、一緒に訴えて出てくれる人はいなかった。

「校長に気に入られなければ評価は下げられるし、異動もさせられてしまう。私は覚悟を決めてやっていました。自分の学校を変えることは、覚悟さえあればできるんです」

ただ、異動すれば、また一からやり直し。「子どもに向けて力を投じたいのに」と徒労感がつのった。

2015年冬、電通の新入社員だった高橋まつりさんが亡くなる「電通過労自殺事件」があり、世の中で「働き方改革」が言われ始めた。そんな中、学校の世界は変わる気配が全くなかった。

「これから30年、この働き方続けられるのだろうか」。将来のことを考え、7年間の教員生活を2018年3月に終えた。

●LINEで組合員が交流

組合結成メンバーの3人は、埼玉県内の市立小学校の男性教員が未払い残業代を求めている裁判の報告会で知り合った。

2018年の教員の教職員団体の加入率は、33.3%と43年連続で低下。日本最大の教職員組合である「日教組(日本教職員組合)」の加入率も、42年連続で低下している。3人は組合活動の経験はなかったが、「同じ問題意識をもつ仲間が協力して動けるように」と労働問題に特化した組合設立を考えた。

「直接言いづらい教職員に代わって、組合が第三者として入ることで、解決に向かうのではないか」。佐野さんはそう話すが、行動を起こすことだけを目標としているわけではない。「何より繋がりをもつことが大切」と承認制のLINEのオープンチャットを活用して、組合員同士が話せる場を設ける。

LINE

佐野さん自身も教員時代は「完全に一人だった」と振り返り、「職場では話しづらくても、『今日こんなことがあった』と愚痴を言うだけで精神的なはけ口になる。アドバイスをしたり、情報共有する場としてオープンチャットを使って欲しい」と話す。

●「我々を活用して」

加入対象は関東の公立学校(幼、小、中、高、特別支援)の教職員。直接現場に行く可能性も考え、関東の教職員に絞っているが、将来的には支部の設立も考えられるという。

組合員から相談があった場合、希望に応じて校長に電話で直接交渉を行う。それでも改善が見られない場合は、教育委員会に交渉したり、都道府県の人事委員会に改善を訴え措置要求を行ったりする予定。顧問弁護士に、活動内容や交渉内容、文言を法的にチェックしてもらう。

佐野さんは「労働に関する課題を感じているけれど、どうしたらいいかわからない。一人で孤立している方に繋がりを持ってもらいたいし、知識をつけるために我々を活用してもらいたい」と話した。

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