医師や看護師などでつくる日本医療労働組合連合会(日本医労連)は3月7日、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見を開き、医療従事者の労働実態調査の結果を発表した。残業が常態化しているといい、担当者は「過重労働は働く者の命だけでなく、患者さんの安全にもかかわる問題だ」と労働環境の改善を訴えた。
●「労働時間の上限規制の法制化を」
労働実態調査は毎年行っている。今回は昨年10~12月にかけ、日本医労連に加盟している労働組合の組合員ら約1万2500人を調べた。回答者の半数が看護職で、リハビリなどの医療技術職が約30%、医師は3.9%だった。
調査結果によると、6割近くの医療従事者が患者の情報収集や薬の準備などで、始業前に1時間以内の仕事をしているという。終業後についても、約7割が残業。1時間以内が多数だが、1~2時間の残業をする人も全体の16.2%いた。
医療従事者の残業時間そのものは、他の業種と比べ決して長いとは言えない。しかし、人によっては看護師を中心に深夜勤務があり、日勤から夜勤の場合、残業があるとほとんど休息をとれない可能性もある。
例えば、くも膜下出血で死亡し、2008年に労災認定を受けた看護師の場合、時間外労働時間は「過労死ライン」と呼ばれる月80時間より短い約52時間だった。しかし、月5回ほどの夜勤の日は20時間近くの連続勤務になっていたという。
会見で、日本医労連の三浦宜子書記長は「(労働時間の)上限規制と、(日勤と夜勤の)インターバル規制を法制化してもらいたい」と訴えた。
●未払い残業代は平均「月6万6000円」以上
調査では、医療従事者があまり残業代を申請していないことも分かった。始業前に仕事をしていると答えた人のうち7割以上が「時間外労働として請求していない」と回答。終業後の残業については約3割が全額を請求していると答えたが、4割近くが「一部請求している」に留まり、「していない」人も2割強いた。
請求しない理由については、25.3%が「請求できない雰囲気がある」、10%が「請求できると思わなかった」としている。日本医労連の試算によると、医療従事者の未払い残業代は、平均で月6万6000円以上になるという。
三浦書記長は「お金の問題もだが、未払いをずっと認めていると、職場の人員不足が覆い隠されてしまう。過重労働は、働く者の命だけでなく、患者さんの安全にもかかわる問題だ」と話していた。