名古屋市の市立小学校が、教員と子どもたちの集合写真を廃止する方針を打ち出し、保護者が反発するなど波紋を広げています。
毎日新聞の報道によると、名古屋市瑞穂区の小学校は4月、「プライバシーの保護」などを理由に今年度から学級写真を撮らない方針であると保護者に伝えました。
学校のアンケートでは保護者の7割ほどが継続を望みましたが、校長は「個が特定されるリスクが高い」などとして、廃止の方針を維持しているそうです。
ネット上には「写りたくない子どもの意思は尊重されるべき」など方針に賛同する声がある一方、「大切な思い出まで残せなくなる」と疑問の声も上がっています。
こうした方針について、法的にはどう考えればよいのでしょうか。簡単に解説します。
●廃止の背景は?
クラスの思い出を1枚の写真に残したいという気持ちは、よくわかります。
ただ、写りたくないという子や家庭もあるでしょう。
理由は色々あると思いますが、特に近年では、スマートフォンの普及などによる盗撮被害の増加や、子どもの画像が生成AIなどで性的に加工される事案も起きていることと関係していると思われます。
教員による盗撮画像の共有が相次いで報道され、文部科学省が2025年に服務規律の徹底と警察との連携を求める通知を出すなど、学校が児童の画像の扱いに慎重になる背景があります。
本件では、学級写真が悪用されたと報じられているわけではありませんが、今回の小学校の校長も、児童の盗撮画像を共有したなどとして教員らが逮捕された事件をきっかけに、廃止を検討したと説明しているそうです。
この事件では、名古屋地裁が今年6月、元教諭の1人に対する判決で、学校で活動中の女児の写真が生成AIで裸のように加工されていたと認定しています。
●肖像権の問題も
写りたくないという子を無理に写すのは、法律の面からも難しいところがあります。
自分の姿をみだりに撮影されない利益は一般に「肖像権」と呼ばれ、最高裁も法律上保護されるべき人格的利益として認めています(最判平成17年11月10日)。
もっとも、断られたら一切撮れないというわけではなく、撮影の目的や場所、必要性、撮り方などを総合して、我慢すべき限度を超えるかどうかで判断されます。
●今後どうすればよい?
集合写真を続けるか、やめるかは、基本的には学校が判断する事柄です。
ただ、写りたくない子がいても、全員分をやめなければならないというわけではありません。
写りたい人だけで撮るという形もあり得ます。
その際は、写らないと実質的な不利益を受けるような、言い出しにくい状況を作らない配慮が大切です。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)