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「休日」「残業」入社前に聞いた「労働条件」がウソだらけ…新入社員の戦い方
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「休日」「残業」入社前に聞いた「労働条件」がウソだらけ…新入社員の戦い方

会社が言ってた労働条件がほとんど嘘だったと発覚したーー。この春大学を卒業し、働きはじめたばかりの新社会人から、そんな窮状がネットの掲示板に投稿された。

投稿者によると、事前には「土日祝日休み、その他好きな時に休める休暇あり。年間休日120日」と説明されていたのに、実際は、日曜出勤ありで、年間休日は90日程度、有給休暇はお盆以外取るなと強い調子で言われたという。

また、「きちんと残業代が出る」と説明されていたのに、入社後に残業代がでないと伝えられたそうだ。この他にも、あると言われていたはずの新人研修が実施されないなど、当初説明されていた勤務条件とは、異なる点が多々あるという。

入社前と後で、労働の条件がまったく異なっているような場合、新入社員はどんな手段がとれるのだろうか。労働問題に詳しい今井俊裕弁護士に聞いた。

●合意された労働条件には、法的拘束力がある

「会社が従業員と労働契約を結ぶ際は、その従業員に対して、一定の事項を通知しなければなりません。その中でも特に基本的な事項については、口頭ではなく、書面で通知することが義務づけられています。

たとえば、契約期間、就業場所や業務内容、労働時間や休日休暇や賃金に関する事項、退職に関する事項等です。もちろん書面でなく口頭で通知された事項でも、それについて労使ともに合意すれば、それは法的拘束力のある労働条件となります」

今井弁護士はこのように述べる。法的拘束力があるということは、入社後に異なった条件を示すことは問題があるということだろうか。

「そうですね。会社の一方的な都合や意思だけで反故にはできません。たとえば、休日として合意された日に、従業員には本来的に出社する義務はありません。休日出勤を命じるには会社側にその根拠や理由が必要となります。もちろん、その休日出勤分の賃金も発生します。

また、会社と合意していなくても、有給休暇や時間外賃金(残業代)を求める権利は、法律に基づいて当然に従業員に発生します。

こうした合意内容、法律上の権利を、会社が認めないのであれば、会社が守るべき義務を履行していないことになります。未払残業代や休日出勤分の未払賃金について、法的手続にしたがって、会社に支払を請求することができます」

●「見切りをつけ、退職する勇気も必要」

具体的には、どのように請求すればいいのか。

「新入社員の立場で、いきなり会社にモノを言うのも勇気と覚悟がいるでしょうが、未払残業代等の支払について、裁判所へ労働審判の申立てや、訴えの提起をするという方法もあります」

今後も在職するつもりの場合だと、そうした手段にでることは難しいのではないか。

「匿名で労基署へ申告や情報提供をする、あるいは理解を示してくれる職場の管理職を通じてトップへ言ってもらうといった手段も考えられます。

一方で、違法性が重大または継続しているようなブラック企業であるならば、見切りをつけて退職し、その後に裁判上の手続をとる勇気も必要かもしれません」

今井弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

今井 俊裕
今井 俊裕(いまい としひろ)弁護士 今井法律事務所
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。

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