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「今日も会えて嬉しい」上司が恋愛感情むき出し、セクハラじゃないの?
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「今日も会えて嬉しい」上司が恋愛感情むき出し、セクハラじゃないの?

バイト先の上司に一方的に恋愛感情を持たれて困惑しているーー。ネット上の掲示板に、そんな書き込みが投稿された。

投稿者によると、上司は仕事あまり教えず、「今日も会えてよかった。嬉しい」など「一方的に恋愛みたいな会話」をしてくるのだという。あるときの会話では、「今度どっか遊びに行かない?」という質問に、投稿者が「えー」と返事をしたところ、上司は「分った、じゃ、また誘う」と言ったという。

投稿者は「仕事しづらくなる」「まだハタチなんでどこまでが普通でどこからが異常事態か分らなくてけっこうガチで困惑してる」と胸の内を明かす。

部下に対して一方的に恋愛感情をむき出しにした上司の発言は、セクハラなのか。岩城 穣弁護士に聞いた。

●恋愛感情むき出しの発言はセクハラ?

セクハラには、大きく分けて2種類のタイプがあり、以下のように定義づけられています。

(1)「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること」(対価型セクハラ)

(2)「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること」(環境型セクハラ)

今回のケースでは、上司が部下である投稿者に対して「今日も会えてよかった。嬉しい」といった恋愛感情をあらわにした言葉をかけています。ただ、現時点では、投稿者が拒否して不利益を受けるような事態は生じていないようですので、(1)の対価型に該当するまでには至っていません。

また、「今日も会えてよかった。嬉しい」とか「今度どっか遊びに行かない?」との言葉は「性的な言動」とまではいえないため、(2)の環境型セクハラにも当たりません。そのため、現段階では、まだセクハラには該当しないと思われます。

ただし、今後事態がエスカレートして、上司が投稿者の身体に触ろうとしてきたり、投稿者が拒否しているのにしつこく食事に誘い、投稿者が応じないと仕事上の不利益をちらつかせるような場合は(1)の対価型セクハラに該当する可能性がありますし、投稿者や他の労働者が不快感を募らせて、仕事に支障を来すといった状況が生じれば、(2)の環境型セクハラに該当する可能性があります。

●「不快なので、やめてください」とはっきり伝えることが大切

実質的に考えると、一般論として上司が部下を好きになり、職場恋愛、職場結婚などにつながることはあります。上司が部下に恋愛感情を示す言葉をかけることが許されないとまでいうことはできないでしょう(もっとも、その上司が妻帯者かどうかなど、総合的に評価する必要がありますが)。

大切なことは、投稿者が、上司からこのような言葉をかけられたくないのであれば、早い段階で、「そういう言葉は不快なので、やめてください」とはっきり伝えることです。

あいまいな対応や迎合的な態度をとると、上司が「その気があるのではないか」と誤解したり期待したりして、言動がエスカレートする可能性があります。

自分からどうしても言えない場合は、会社の人事労務などの相談担当者や、信頼できる別の上司に相談するとよいでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

岩城 穣
岩城 穣(いわき ゆたか)弁護士 いわき総合法律事務所
1988年弁護士登録、大阪弁護士会所属。過労死問題をはじめ、労働・市民事件など幅広く活躍する「護民派弁護士」。

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