労働組合を脱退した後、通常の勤務ローテーションから外されるなど不利益な扱いを受けたとして、東京都交通局の都営バス運転手が8月24日、東京都を相手取り、慰謝料など330万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
原告の佐々木政彰さんと代理人の笹山尚人弁護士らが同日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで記者会見を開き、明らかにした。
●組合やめたら年末年始に有給とれず
訴状によると、佐々木さんは2007年4月から東京都交通局が運営する都営バスの運転手として勤務し、2019年10月から千住自動車営業所に所属している。
都営バスの営業所では、運転手が複数の班に分かれ、「基本名刺」と呼ばれる勤務ローテーションに基づいて乗務している。
千住営業所では、各班の運転手が5日勤務、2日公休を繰り返しながら、早番や午後番などを担当する。ローテーションによって、どの日にどの運行ダイヤを担当するかがある程度決まっているため、運転手は先々の勤務を見通し、私生活の予定を立てることができるという。
ところが、佐々木さんが東交労組を脱退した翌月の2024年5月以降、所属していた班の名簿や「基本名刺」の勤務ローテーションから外されたとしている。
その結果、勤務日の3日前になって初めて担当する路線などが示され、それまでは出勤時間や休憩時間、担当する乗務系統などがわからなくなったという。
また、千住営業所では、年末年始に有給休暇の取得を希望する職員について東交労組が抽選を実施する慣習があるが、2024年の抽選では組合員以外の参加が認められず、佐々木さんは年末年始に有給休暇を取得する機会を失ったと主張している。
●「労働組合に参加しない自由を侵害」と主張
こうしたことから、佐々木さん側は、基本名刺に基づいて勤務をローテーションさせているにもかかわらず、合理的な理由なく佐々木さんだけを異なる扱いとしたことは、憲法14条1項の平等原則に違反すると主張している。
また、組合脱退をきっかけに基本名刺から外したことについて、労働組合に参加しない自由を侵害するもので、地方公務員法52条や地方公営企業等の労働関係に関する法律5条に違反すると訴えている。
さらに、佐々木さんだけを基本名刺から外して「仲間外れ」の状態を作り出したことは、労働施策総合推進法に基づく指針がパワーハラスメントの典型例として挙げる「人間関係からの切り離し」にあたると指摘。
一連の措置によって精神的苦痛を受けたなどとして、国家賠償法に基づき、慰謝料など計330万円を東京都に求めている。
●過去にも組合脱退者を「異なる扱い」
笹山弁護士らは、東京都交通局の別の営業所でも過去に、東交労組を脱退した職員を組合員と異なる勤務上の扱いとした事例があったと指摘している。
2020年には品川営業所で、東交労組を脱退した職員に対し、組合員と異なる勤務上の取り扱いをするとの連絡が一度伝えられたが、その後撤回されたという。
2022年には南千住営業所でも、東交労組を脱退した職員について、組合員と異なる取り扱いがおこなわれた。問題を指摘された営業所側は謝罪し、撤回したという。
こうした事態を受け、東京都交通局自動車部長は2023年6月、各営業所長に「職員の勤務の取扱いについて」と題する通知を出した。
通知では、東京都では公営企業局であっても労働組合への加入を問わず採用されており、「組合員であるか否かは労働条件等の処遇に影響を及ぼさないオープンショップ制」のみが認められていると説明。
組合を脱退した職員について、東交労組の組合員と異なる勤務上の取り扱いをすることは、地方公営企業等の労働関係に関する法律に違反する取り扱いであり、「認められるものではない」として、各営業所に周知徹底と再発防止を求めていた。
●原告「それってただのいじめじゃないですか」
会見で佐々木さんは、情報開示請求を通じて調べたものの、自身が異なる勤務上の扱いを受ける根拠は見つからなかったとして、「それってただのいじめじゃないですか」と語った。
そのうえで、「私のワークライフバランスをぶち壊しておいて、何事もなかったかのように仕事をしている当事者に対して、責任の所在をはっきりさせたい」と述べた。