過労死遺族らが5月22日13時半から首相官邸前で、今週採決される見通しの「働き方改革関連法案」、とりわけ「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)に反対する座り込みを始めた。安倍晋三首相への面談を求めている。気象庁によると、この日の東京都心の最高気温は27度で、7月上旬並だった。
高プロは、年収1075万円以上の一部専門職を労働時間規制から除外するもの。「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西笑子さんは、高プロの導入により過労死が増えるとして、「強行採決はしてはならない」と強い口調で訴えた。
●労働者が求めているかのような説明に憤り
寺西さんの夫は飲食店の店長で、1996年に過労自殺した。会社からは当初、「店長には裁量がある。勝手に働いて、勝手に死んだ」と言われたという。
寺西さんには、会社の暴言と政府の説明がダブって見える。「政府は、未だに『多様な働き方』など労働者が求めているかのような説明をしている。許せないです」
高プロでは、使用者に「事業場内にいた時間」と「事業場外での労働時間」を足した「健康管理時間」の把握を求めているが、過労死の認定基準になる「労働時間」については義務付けていない。加えて、裁量労働制と違って、高プロには「労働者の裁量」は必要ない。
過労死が増えるだけでなく、過労死が「自己責任」にされてしまうのではないか、と家族の会は危惧している。
●労働者目線の働き方改革に
家族の会は過労死防止を国会に訴え続け、2014年の「過労死等防止対策推進法」成立につなげた経緯がある。
神奈川県の会員・中野淑子さんは、「少しは過労死ゼロに向かうのかと思ったが、まったく逆の法案が通ろうとしている」と嘆いた。中野さんの夫は、中学校の教員で1987年に過労死している。
教員は給特法で「時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」と定められている。「高プロを先取りした教員の働き方を見てきた。過労死を促進する高プロは許せない」(中野さん)
また、システムエンジニアだった息子を亡くした兵庫県の西垣迪世(みちよ)さんは、「働く人が暮らしやすい、そんな働き方改革にして欲しい」と労働者目線の働き方改革を訴えた。
●連合・神津会長「高プロは百歩譲って、過労死・過労自殺をゼロにしてから」
座り込みには、16時半ごろから、連合の神津里季生会長、全労連の小田川義和議長、全労協の金澤壽議長が相次いで陣中見舞いに訪れた。このうち、神津会長は次のように語り、高プロを批判した。
「私は、(働き方改革関連法案にある)罰則付きの残業時間の上限規制や同一労働同一賃金は重要だと思っているんですよ。ですが、国民の目からすると高プロなんてものがセットになっていて、どっちが『本性か』となっている。(高プロは)百歩譲って、過労死・過労自殺をゼロにしてからですよ」
座り込みは17時ごろまで続いた。衆院厚生労働委員会で採決が予定されている明日23日も13時〜17時まで実施する。