「反省文を原稿用紙で100枚書け」――。問題を起こした生徒に、そんなペナルティを科す学校があると週刊文春が報じ、ネットで話題になっている。
週刊文春によると、くだんの学校は渡邉美樹・ワタミ会長が理事長を務める私立の中高一貫校「郁文館夢学園」だ。もし本当の話ならば、かなり異例のやり方だろう。ネットでも「それって教育なのか?」「そんなに書くことない」など、反省文の分量を問題視する声があがっている。
これは学校の話だが、もし会社で同じようなことがあったら、どうだろう? 会社は、過ちを犯した従業員に対して「反省文100枚を書け」というペナルティを科せるだろうか? 労働法に詳しい波多野進弁護士に聞いた。
●なにか問題が起きたときに、事実関係や対策を報告させるのは問題ない
「『反省文』と一口で言っても、その内容は多様なので判断が難しいところですね」
このように断りながら、波多野弁護士は次のように説明する。
「会社が従業員に対して、業務に際して生じた問題点などの事実関係等を、文書(顛末書)で報告させることは認められると思われます」
つまり、単なる事実関係を報告する書類ならば、特に問題ないということだ。では、「反省の意思」を文書で示すことを求めた場合はどうなのか。
「事実関係の報告の次元を超えて、謝罪や反省を示すことを求める文書(反省文)の提出を求めることは、憲法が保障する『内心の自由』を侵害するものとして、これを無効とする考え方があります。
また、このような立場に立たないとしても、『反省文100枚を書け』という懲戒処分は、懲戒権の濫用として、無効となる可能性が高いと思われます。仮に、会社の就業規則にそのような懲戒規定が存在したとしても、そのように言えるでしょう」
このように指摘したうえで、波多野弁護士は次のように続ける。
●「反省文100枚」は嫌がらせと評価される可能性も大きい
「会社が従業員に反省文を提出させる本来の目的は、問題を起こした従業員に、なぜそのような問題が起きたのかという事実関係を自ら整理してもらったうえで、なぜそのようなことを起こしてしまったのか、再発防止のためにどのようなことにをすればいいのかなどを自己分析させ、反省などを促すことにあるはずです。
ところが、『100枚』という誰の目から見ても異常な量を求めることは、本来の目的を逸脱した合理性のない懲戒(業務命令)ということになると思われます。また、会社が従業員に『100枚』も反省文を書かせることは業務上明らかに不要なことだといえ、見せしめや嫌がらせ(ハラスメント)と評価される可能性も高いでしょう」
そんな会社はないと思うが、もし「反省文100枚」を書かせるような会社があったとしても、従業員は「それは懲戒権の濫用ですよ」とはねつけることができるというわけだ。従業員が間違いを犯した場合、会社はどんなペナルティでも科していいわけではない、ということは覚えておきたい。