仲の良かった兄弟姉妹でも「相続」の話をするタイミングで、途端にいがみ合いを始めるということも少なくありませんが、もともと「不仲」だったら、さらにややこしくなることは言うまでもありません。そのような場合、そもそも住所や連絡先も知らないということもあります。
弁護士ドットコムにも、母が亡くなったあと、仲が悪い兄弟と相続の話をしなければならないが、居場所がわからないという相談が寄せられています。また、少ない遺産相続のために、わざわざ調べないといけないのかといった相談もありました。相続問題にくわしい嶋田公典弁護士に聞きました。
●遺産分割協議は相続人全員でおこなわないといけない
音信不通になっている兄弟姉妹であっても、亡くなった親の子である以上、相続人として、遺産を相続する権利を持っています。
兄妹姉妹の連絡先がわからない場合、まず、被相続人である親の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を収集して、兄弟姉妹の現在の本籍を調査します。
兄弟姉妹の現在の本籍がわかれば、本籍がある市区町村に「戸籍の附票」を請求します。戸籍の附票は、本籍地の市区町村で戸籍の原本とともに保管されている書類で、戸籍が作られてから現在までの住所が記録されているため、兄弟姉妹の現在の住所を確認することができます。
仮に被相続人の遺産がわずかしかなかったとしても、被相続人が生前に遺言書を作成しており、遺言書にすべての遺産について誰がどの財産を取得するか指定されているような場合でない限り、遺産分割協議が必要になります。
そして、遺産分割協議は、相続人全員でおこなわなければなりません。音信不通の相続人がいる場合は、その相続人の住所を調べて連絡をとる必要があります。
また、法務局で不動産の登記手続をしたり、金融機関で預貯金の解約・払戻手続をするためには、遺産分割協議書を作成して提出する必要があります。
先ほども述べた通り、遺産分割協議は相続人全員でおこなう必要がありますので、連絡が取れない相続人抜きで遺産分割協議書を作成したとしても、その遺産分割協議書は無効となり、不動産の登記手続や預貯金の解約・払戻手続をすることはできません。
なお、戸籍を調査して判明した相続人の住所宛に手紙を送るなどしても、相続人と連絡が取れない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、遺産分割の手続きを進めることになります。
また、戸籍をたどっても、その相続人の所在も生死もわからない場合には、不在者財産管理人の選任申立てや、失踪宣告の申立てをおこなうことになります。