お年玉や児童手当を断りもなく使い込む夫。そんな夫と「別れたほうがいいのでしょうか」という相談が、子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板に寄せられていた( http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=2928283 )。
投稿した人によれば、夫の手取りは18万円。3万円の生活費で、3人で暮らしているという。2歳の子どもの「おむつなど子どもの物もその3万から出します」という生活だ。夫の小遣いは3万円で、さらに子どものお年玉や児童手当を無断で使い込むため、相談者の不満は募っている。
コメントでは「早く離婚すべき」「母子2人で暮らしたほうがまだ豊か」などの意見が寄せられている。子どもに渡されたお年玉や児童手当を親が配偶者、子どもの断りもなく、勝手に使うことには法的な問題はないのか。この夫の行為は、離婚理由ともなり得るのか。斉藤 圭弁護士に聞いた。
●刑法の特例で親は刑事責任を問われず
「親族間の犯罪の場合は刑法の特例があります。親子間の窃盗であれば刑法244条1項の『親族相盗例』により、刑が免除されます。よって被害届を出したとしても罪に問われない公算が大きいため、捜査機関も動きにくいといえます。このため親が刑事責任を問われる状況は、まず想定されません」
では、お年玉を使い込んだ親に民事上の返還義務を負わせることはできないのか。
「この点について検討するには、使い込んだお年玉の金額と用途が重要な要素です。使った金額がそれほど大きくなく、用途も日常生活に関するものであれば、親の財産管理権の濫用とまではいえないでしょう。とすれば、返還義務は生じにくいと解されます。
なお、一般論として、具体的なお年玉等の用途を立証することは、困難であることも多いと思われます。ちなみに財産管理権の濫用がひどい場合には、裁判所の判断で親権の停止といった措置を受けることも理論上はあり得ます。とはいえ、実例はあまりありません」
●離婚を強く希望する場合には、まずは別居するべき
「夫の使い込みが、夫婦の離婚原因になるかどうかという問題があります。この点について検討するにも、やはり金額と用途が重要です。それほど多額でなく、ひどいギャンブルでの浪費等でもないとなれば、使い込みの事実だけで離婚原因にはなりにくいと解されます。投稿された事案も離婚原因とするには難しいと考えます。
よって、離婚訴訟になった場合も、夫に離婚を拒否されると、この使い込みだけを理由に裁判所に離婚を認めてもらうことは難しいと解されます」
では離婚するにはどうすればいいのか。
「離婚を強く希望する場合には、まずは別居するべきです。別居期間がある程度積み上がれば、夫婦としての生活実態は薄れていきます。そうなれば離婚が認められる可能性が高まります」