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「オマエと結婚するくらいなら死ぬ」妊娠発覚後にみえた彼氏の本性、認知も拒否
写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

「オマエと結婚するくらいなら死ぬ」妊娠発覚後にみえた彼氏の本性、認知も拒否

「結婚するくらいなら死ぬ!堕ろして!」。交際1カ月で彼との子どもを授かった女性は、彼からこんな言葉を告げられました。あまりに不誠実な彼から慰謝料を取りたいという相談が、弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者は、交際当初から避妊に協力してくれない彼に対して不安を感じていました。しかし、彼は毎回「子どもができたら、子育てに向けて考えなきゃ」など結婚に前向きと思えるような発言を繰り返していたそうです。

交際が1カ月経過したころ。「気持ちが薄れた」という理由で彼から別れを切り出されましたが、同時に妊娠が発覚しました。すると、彼からは両親への挨拶、新居のこと、経済面など、結婚に向けた前向きな話があったといいます。

ところが、次第に彼の気持ちはブレはじめました。再度話し合いになり、相談者が彼に「一緒に育ててくれる?」と聞くと「堕ろさない、頑張る」と結婚と出産を受け入れる返答をしたそうです。しかし、その後、電話で彼は「やっぱり堕ろして、結婚もしたくない」と態度を一変。「生むと言っても認知しないから!」とまで言われました。

出産できると信じていた相談者は何度も振り回され、精神的な苦痛を感じているそうです。彼から慰謝料を取ることはできるのでしょうか。

木村康之弁護士の解説をお届けします。

●慰謝料請求が認められる可能性は十分にある

ーー相談者から彼に対する慰謝料請求が認められる可能性はありますか。

結論としては、このまま男性側が不誠実な対応を続けるようであれば、慰謝料請求が認められる可能性は十分にあります。

中絶をした女性から男性に対する損害賠償請求について、これまでは、性行為や妊娠について女性の同意があり、中絶も女性の意思決定に基づくものであることを理由に、認められないとする考え方が一般的でした。

しかし、最近の裁判例(東京地裁・平成27年7月31日判決)には、次のような理由で損害賠償を認めるものが存在します。少し長いですが要約して紹介します。

「中絶により直接的に身体的及び精神的苦痛を受け、経済的負担を負う女性は、性行為という共同行為の結果として、母体外に排出させられる胎児の父となった男性から、これらの不利益を軽減し、解消するための行為の提供を受け、あるいは、女性と等しく不利益を分担する行為の提供を受ける法的利益を有しており、この利益は生殖の場において女性が男性に対して有する法律上保護される利益である。したがって、男性がこれらの不利益を軽減し、解消するための行為をせず、あるいは、女性と等しく不利益を分担することをしなければ、男性は女性の法律上保護される利益を違法に侵害したとして、損害賠償責任を負う」

たしかに、女性が性行為や妊娠、その後の中絶について、同意や承諾をしているとしても、そのことをもって、中絶の際に男性に不利益を軽減・解消してもらい、あるいは分担してもらう権利までをも放棄したとはいえません。

男性が、女性の不利益を軽減する、解消する、あるいは分担することを怠った行為が違法であるとして、損害賠償(慰謝料等)を請求することは十分可能でしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

木村 康之
木村 康之(きむら やすゆき)弁護士 経堂綜合法律事務所
東京弁護士会所属。離婚,男女問題,相続・遺言,交通事故,債務整理といった一般的な民事事件や刑事事件,行政事件に加え,社会保障(年金,生活保護,医療保険,労働保険等)に関連する事件の解決にも取り組む。

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