弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 離婚・男女問題
  3. 自称「シングルパパ」の呆れた正体 結婚をほのめかし、シングルマザーと交際
自称「シングルパパ」の呆れた正体 結婚をほのめかし、シングルマザーと交際
写真はイメージです(buritora / PIXTA)

自称「シングルパパ」の呆れた正体 結婚をほのめかし、シングルマザーと交際

「シングルファーザーと偽って、私と付き合っていた男性を許せません。貞操権侵害で慰謝料を請求できますか」。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられています。

相談者は「バツイチのシングルファーザーで3歳の娘が1人いる」という男性と出会い、自らもシングルマザーだったことから親近感を持ち、交際するようになりました。男性は「元妻の不倫などが原因で離婚した」と話していたそうです。

男性とは週1で会い、結婚をほのめかされたために、避妊せずに肉体関係がありました。また、男性に「飲み屋で働いているから信用できない」と言われた相談者は仕事を辞め、専門職に転職するために学校に通い始めました。

しかし、男性の家に上げてもらえたことはなく、会える時間も少なくなっていきました。

男性は「21時に寝て朝5時に起きる生活なんだ。仕事から帰ったら子供のご飯、お風呂があるから18時以降は連絡がつかない」「携帯は2個持ち」「家は子供がいるから上げられない」などと話していました。相談者は男性に徐々に不信感を持つようになったといいます。

「なんかおかしいよ?」という友人のアドバイスもあって、相談者が問い詰めたところ、 「僕はバツイチで現在既婚者。子供は2人いて、下の子は10カ月です」と白状されてしまったそうです。

相談者は慰謝料を請求できるのでしょうか。山口政貴弁護士の解説をお届けします。

●「貞操権」を侵害されたとして、慰謝料請求することはできる?

ーー相談者は「貞操権」を侵害されたとして、慰謝料を請求したいと考えています。貞操権侵害による慰謝料請求はできるのでしょうか。

法的には「貞操権」は、夫婦関係においての「貞操義務」(不貞行為をしない義務)をさすものです。しかし、相談者のように、ご自身の「貞操権」(自己の意思に反して性的な侵害を受けない権利)が侵害されたとして、慰謝料請求をする際に使われることもあります。

今回のケースのように、交際相手(多くの場合男性)が既婚者であることを知っていれば交際しなかったのに、既婚者であることを隠されていたため交際を続けざるを得なかったケースは、感情的には許しがたい行為であり、高額な慰謝料を請求したいところです。

しかし、それだけでは、相談者の方が望むような「貞操権侵害」による慰謝料請求をすることは困難です。ただ、慰謝料請求ができる場合もあります。

たとえば「結婚を匂わせて長期間交際を継続した」、「既婚者の言葉を信じて勤務先を『寿退社』した」、あるいは「避妊せずに複数回性交渉をした」などの場合です。このような既婚者側に違法性が強いと思われる事案では、場合によっては慰謝料請求が認められる可能性があります。

●慰謝料請求が認められた裁判例も

ーー今回のケースは、違法性が強いといえるでしょうか。

男性が結婚をほのめかし、相談者が仕事を辞め、かつ避妊せずに性交渉があったことからすると、慰謝料請求が認められる可能性があります。

実際の裁判例ですが、既婚男性が独身女性に対して結婚していることを隠して交際を続けた事案で、慰謝料請求が認められています。この事例では、近いうちに結婚しようと伝えたり、独身女性の職場の上司や同僚に寿退社する旨を報告したりしていました。しかし最終的に既婚者であることが発覚しました。

この事案につき、平成27年1月、東京地方裁判所は男性側に対し、慰謝料100万円、弁護士費用10万円、計110万円を女性に支払うよう命じる判決を言い渡しました。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

山口 政貴
山口 政貴(やまぐち のりたか)弁護士 神楽坂中央法律事務所
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする