「義弟と義母に離婚を強要されています」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。
相談者は、妻の実家で義母(妻の母)と同居しているという。ある日、相談者は些細なことから妻とケンカ。離婚話が出たものの、お互いに話し合い、ともに夫婦として歩むことになった。
ところが、このことを知った義弟(妻の弟)は激怒。相談者に「姉とは離婚してもらう。離婚以外の選択肢はない」と電話をかけてきたという。
それだけではおさまらず、義弟は相談者の車に嫌がらせをしたり、暴言を吐いてきたりするようになった。また、妻も義弟と義母に離婚届を書くように強要してきたため、うつ状態になっているという。
夫婦関係のあり方は他の家族や親族にとっても無関係とは言えない。しかし、精神的にまいってしまうほど強く離婚を迫る義弟や義母の行為に問題はないのだろうか。髙橋裕樹弁護士に聞いた。
●夫の母が「別れなさい」というケースは多い
ーー相談者夫婦は妻の弟と母に離婚を強く迫られているようです。
「離婚しろ」と義弟まで介入してくるケースはやや珍しいかもしれませんが、義母が介入してくるケースは珍しくありません。今回の義母は妻側ですが、夫側の義母が「別れなさい」とそそのかすケースが多いように思います。
その義母の意見を受けて、夫の気持ちが離婚に傾いていき、一方で、義母の意見に流される夫を目の当たりにした妻が「マザコン」と幻滅して離婚に応じるというケースの相談を今年だけでも何件受けたかわかりません。
今回のケースでは、義弟と義母に離婚を迫られているようですが、離婚を含め夫婦関係をどうしていくのかを決めるのは、当事者である夫と妻であって、家族・親族の意見に従う必要などありません。
DVなどのケースであれば、手を差し伸べる必要もあるかもしれませんが、それは妻への精神的サポート、情報提供、離婚協議への立ち合いなどの方法によるべきであって、義母や義弟が、夫に離婚を迫ったり、妻に離婚届を書くよう強いるのはお門違いです。
●義弟と義母の行為、犯罪になることも
ーー妻の弟と母の行為は法的に問題ないのでしょうか。
義弟が夫に行った車への嫌がらせについては、器物損壊罪になり得ます。暴言については、脅迫罪、名誉毀損罪、侮辱罪、さらには傷害罪や強要未遂罪などにもなり得るでしょう。
また、義弟や義母が妻に離婚届を書くように迫る行為も強要未遂罪に、うつ状態にまでしているのであれば傷害罪にもなり得るでしょう。
そして、これだけの犯罪的な言動をしているわけですから、妻も夫も、義弟や義母に対して不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料や(簡単ではないですが)引っ越し代なども請求できるかもしれません。
ーー今後、相談者夫婦がまずやるべきことは何でしょうか。
損害賠償請求はいずれ生活が落ち着いてから検討すればよいと思いますので、まず相談者夫婦としては、妻側の義母・義弟の意見など聞かずに、あるいは連絡や言動をすべて無視して、2人で転居等今後について協議をすべきと思います。義母と同居している以上、居心地が相当悪くなっていることは明らかでしょうから。