「不倫をやめろ」という内容の怪文書が3カ月前から届いているーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。
相談者によると、これまで不倫をやめるように促す手紙が3回届いているという。3回目の手紙の中には、相談者を盗撮した写真も同封されていたようだ。
「私だけではなく、私の両親のもとにも手紙が届いています。事実無根の内容で、『親展』の判子がおされています」と相談者は不気味に感じている。
ただし、手紙の送り主は特定できていない。仮に特定できた場合には、手紙の送り主を罪に問うことはできるのだろうか。中西祐一弁護士に聞いた。
●「ストーカー規制法」違反となる可能性も
ーー送り主の行為は「名誉毀損」罪にあたるのだろうか
「名誉毀損罪は『公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した』場合に成立します(刑法230条1項)。今回のケースでは、手紙は相談者ご本人とその両親にのみ送られており、『公然と事実を摘示』したとはいえませんので、名誉毀損罪は成立しません」
ーーでは、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」に違反しないのだろうか
「『不倫を止めろ』という手紙を送ることは、ストーカー規制法2条1項7号の『名誉を害する事項を告げ』ることにあたると考えられます。
また、相談者を盗撮した写真を送ることは、同項2号の『行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその知り得る状態に置くこと』に該当すると思われます。
そして、このような行為が反復されていますので、送り主の行為は『ストーカー行為』(同条3項)にあたる可能性があります。
ただし、『ストーカー行為』といえるには、動機が恋愛感情等に基づくものである必要があります。現在判明している事情だけでは、『ストーカー行為』に該当すると断定することはできません」
●送り主に慰謝料請求できる可能性も
ーー相談者は送り主を特定できていないようだ。このような場合でも、警察に相談することは可能なのだろうか
「はい。『ストーカー規制法』違反という犯罪の可能性があるのですから、警察に相談することは問題ありません」
ーーもし、送り主を特定できた場合は、送り主に慰謝料を請求することはできるのだろうか
「仮に送り主の行為が犯罪にあたらなかったとしても、相談者に不安感・不快感を与えていることは明らかです。そのため、民事上の不法行為として、慰謝料を請求できる可能性はかなり高いと思われます」