浮気を許すか迷ったときに考えたいこと
夫の浮気を許し、再構築を目指すという選択は、決して珍しいものではありません。
そしてその選択は、情けないことでも、都合のいい人間になることでもありません。生活や子ども、そして自分自身の気持ちを守るための、現実的な判断のひとつです。
浮気を許すかどうかに唯一の正解はない
夫に浮気をされたとしても、別れたくない、あるいは、別れられない理由は人それぞれです。 具体的には、次のような理由が挙げられるでしょう。
- 子どもの生活環境や学校を変えたくない
- 自分ひとりの収入では生活を維持できる自信がない
- 子どもと離れて暮らすことがどうしても受け入れられない
- 相手への愛情が完全には消えていない
これらはどれも、他人の価値観で否定されるような理由ではありません。
許すか別れるかで世の中の意見が割れるのは、それだけ唯一の正解がないからです。周囲の声よりも、ご自身の生活と希望を基準に考えて構いません。
自分が何を優先したいか整理する
許すことは、相手に屈することではありません。何を優先するかを自分で選び直す行為です。 一方で、裏切られた相手を再び信じることには、多大なエネルギーが必要です。信じようと努力することに疲れてしまうのも、ごく自然な心の動きです。 怒りや悲しみが入り混じった状態では、すぐに結論を出すのは難しいものです。まずは、「自分がこれからの生活で何を守りたいのか」「何が一番不安なのか」を少しずつ整理していくことから始めてみてください。
夫の浮気を許して関係を続けるメリット・デメリット
許すか別れるかを感情だけで決めると、後から気持ちの揺り戻しが起こりやすくなります。
浮気を許すことには、生活基盤を大きく変えなくて済むというメリットがあります。その一方で、精神的な負担が長く続くというデメリットも避けられません。
まずは、それぞれの選択がもたらす現実的な影響を比べてみましょう。
| 観点 | 許す場合と別れる場合の違い |
|---|---|
| 生活・経済 | 【許す場合】現在の世帯収入や住まいを維持しやすい 【別れる場合】世帯収入が減る・住まいを変える可能性が生じる |
| 子ども | 【許す場合】学校や生活環境を変えずに済む 【別れる場合】環境の変化や親権・養育費の取り決めが生じる |
| 精神面の不安 | 【許す場合】再発を疑い、フラッシュバックが続くことがある 【別れる場合】疑いの日々や不安から解放される |
生活・経済面と子どもへの影響
関係を続ける最大の利点は、生活基盤や環境を維持できることです。 収入と住まいが維持されるため、離婚して一から自活するような経済的な不安や、生活水準が下がる心配をせずに済みます。 また、子どもがいる場合、その影響を最小限に抑えられることも大きな理由になります。転校や引っ越しを避けられ、両親がそろった今の環境でこれまで通りに育てられることは、許すという選択を後押しする強い動機になるでしょう。 実際に、子どもがまだ小さいうちは、生活の安定を優先してあえて別れを選ばないという方も少なくありません。
精神的な負担と再発への不安
デメリットとして大きいのは、疑いの感情が簡単には消えないことです。ふとした瞬間に発覚当時の場面がよみがえる、いわゆるフラッシュバックに苦しむ方もいます。 関係を修復しようと決めたものの、相手の行動を疑って携帯電話を確認するようになったり、口論が絶えなくなったりして、双方が限界に近づいてしまうケースも少なくありません。許した後にこそ、感情の扱い方が問われることになるのです。 再発の可能性が残ることも、見過ごせないデメリットです。話し合いのうえで再構築を始めた数か月後に、再び同じことが発覚することもあります。 また、許して婚姻を続けるという選択が、後の法的な評価に関係する可能性もあります。 たとえば、不貞に対する慰謝料は、夫婦関係をどの程度損なったかによって額が変わる傾向があり、離婚しなかった場合は離婚に至った場合と比べて低くなりやすいとされています。 もっとも、メリットがあるからといって、精神的な苦痛を我慢し続けることが正解というわけではありません。 これらの比較はあくまで判断材料であり、どちらを選ぶかを決めるのはご自身です。
離婚する場合・しない場合それぞれの慰謝料相場は、以下で解説しています。
関連記事不倫・浮気の慰謝料相場はいくら?ケース別の目安と請求手順・注意点 →
相談者の疑問
配偶者に不貞され、相手側に慰謝料請求してます。
【質問1】
慰謝料請求したのですが行為態様等を鑑みて減額交渉されております。>>> 質問の続きを見る
弁護士の回答岡田 晃知弁護士
不貞慰謝料は、夫婦関係をどの程度毀損、破綻させたかによって額が変わります。
そのため、不貞が原因で離婚に至っていれば高額になり、>>> 回答の続きを見る
離婚せずに関係を続けるか慎重に考えたいケース
関係を修復できるかどうかは、相手が反省しているか、相手も再構築を望んでいるか、そして、自分の側に受け入れる余地が残っているかで決まります。
いずれかが欠けている場合、浮気を許す気持ちがあっても、円満な再構築は難しい場合があるでしょう。
再構築の条件を考える前に、次の項目に当てはまるものがないかを確認してみてください。
- 浮気を指摘すると怒り出し、話し合いにならない
- 「何が悪い」「嫌なら離婚する」と開き直る
- 謝罪はするが、同じことを繰り返す
- やめてほしいと伝えても行動が変わらず、嘘を重ねる
- 相手に触れられることに強い嫌悪感がある
- 相手の顔を見るたびに、当時の場面がよみがえる
これらは大きく分けると、「話し合いが成立しない」「同じことを繰り返している」「自分自身の苦痛が強い」という3つのケースに整理できます。ひとつずつ見ていきましょう。
話し合いが成立しない・開き直る
分かりやすい判断材料のひとつは、浮気をした夫側が、妻を責めるような関係になっていることです。 たとえば、浮気の話を持ち出すと「何が悪いんだ」「信じられないのか」と語気を強められたり、そのまま話を打ち切られたりするケースがあります。 さらに、「文句があるなら離婚しろ」と迫ったり、子どもを引き合いに出して黙らせようとしたりすることも少なくありません。こうした関係では、そもそも話し合いの土台が成立していません。 対等に話し合えないような関係のまま許しても、「もう浮気はしない」といった約束を守ってもらうことは期待しにくくなるでしょう。 なお、こうした不誠実な態度は、後に慰謝料を請求する場面で、行為が悪質だったと判断される材料になる可能性があります。
同じことを繰り返している・約束を守らない
同じことが二度目である場合や、やめてほしいと伝えても夫の行動が変わらない場合は、判断の基準を変えたほうがよい局面といえます。 一度目と二度目では、夫の受け止め方そのものが異なります。「二度としない」と約束しながらそれを破り、嘘をつかれる状態が続いているのであれば、言葉をそのまま信じるのは難しくなります。 書面を交わした後でも、同じ相手との連絡が再開しているような場合は、さらに慎重な判断が必要です。約束を守れないことが繰り返されているなら、条件を増やすことで解決する段階を過ぎている可能性があります。
自分自身の苦痛が強く続いている
頭では夫を許そうと決めても、心では受け入れられないということがあります。 触れられることに強い抵抗を感じる、顔を見ると当時のやり取りがよみがえるといった反応は、意志の力で消せるものではありません。 嫌悪感は、時間が解決するケースもあれば、そうでないケースもあります。苦しい時間を無理に乗り越えようとする必要はありません。 まずは少し様子を見て、やはり気持ちが戻らないと感じたなら、別の道を選ぶことも十分にあり得る選択です。
浮気を許して関係を続ける場合に話し合っておきたい条件
浮気を許すと決めた場合、気をつけたいのは口約束だけで終わらせてしまうことです。「もうしない」という言葉は、その場では誠実に聞こえても、時間が経つにつれて認識にずれが生じやすくなります。 だからこそ、関係を続けるなら、夫婦間でいくつかの条件を確認し、合意しておくことが大切です。 ここでは、再構築に向けて話し合っておきたいポイントを順を追って整理します。
再発への不安がある場合に確認したいこと
「もうしない」という言葉を信じたい反面、「また繰り返すのではないか」という不安は簡単には消えないものです。 しかし、口約束だけで終わらせてしまうと、夫が事態の重さを理解せず、結局元の行動に戻ってしまうケースは少なくありません。 再発を防ぐためには、夫の言葉や善意に頼るだけでなく、本人に責任を自覚してもらうための「具体的な約束事」を取り決めておくことが重要です。
不倫相手との関係と今後のルール
まず確認すべきなのは、不倫相手との関係を完全に断つ意思があるかどうかです。 これには、「今後一切連絡を取らない」「会わない」といった基本的な約束が含まれます。 そのうえで、日常生活の中で双方が納得できるルールを話し合います。たとえば、「もう関係はない」という安心につながる、以下のような項目です。
- 帰宅時間や休日の予定をどう共有するか
- 家計や個人的な支出について、どこまで透明性を保つか
ただし、相手の行動を過度に監視したり縛りすぎたりするルールは、かえって関係を息苦しくさせてしまうこともあります。お互いが無理なく続けられ、かつ安心できる着地点を探ることが大切です。
約束を破った場合にどうするかも話し合っておく
万が一、再び同じことを繰り返した場合や約束を破った場合にどう対応するのかも、あらかじめ話し合っておくことをおすすめします。
- もう一度話し合いの場を持つ
- 別居や離婚を具体的に検討する
- 慰謝料などのペナルティを課す
事前に「次があったらどうなるか」を明確にしておくこと自体が、再発を思いとどまらせる一つの抑止力として働きます。
決めた条件は必要に応じて書面に残す
話し合って決めた条件は、口約束のままにせず「誓約書」などの形で書面に残すことを検討してみてください。 書面化することには、言った・言わないのトラブルを防ぎ、お互いの認識のずれをなくすという大きな意味があります。また、署名捺印をして形に残すことで、約束の重みを夫に改めて自覚させる効果も期待できます。 ただし、インターネット上のテンプレートを写して法外な違約金を書き込んだり、相手の自由を極端に奪うような条件を設定したりすると、後になって法的な効力が認められない場合があるため、注意しましょう。
誓約書の効力や書き方、無効になりやすい条項は以下で解説しています。
関連記事不倫誓約書の効力と書き方|浮気防止に使えるテンプレート・無効になるNG例 →許すと決めた後も気持ちが整理できない場合
夫を許してやり直すと決めても、心のもやもやがすぐに晴れるわけではなく、「どうしても許せない」という感情が湧き上がるのは、決して特別なことではありません。
やり直すと決めても、気持ちが揺れることはある
許すと決めたからといって、すぐに浮気発覚前と同じように笑い合えるわけではありません。「本当に許してよかったのかな」「また裏切られるんじゃないか」と気持ちが揺れ動くのは、ごく自然なことです。 ここで避けたいのは、関係をこれ以上壊したくないという思いから、不安になっても自分の気持ちを押し殺してしまうことです。 疑われることに対して、次第に夫の機嫌が悪くなることもあるかもしれません。そんな時は、冷静に「約束はちゃんと守ってね」と確認するのは、疑っているからではなく、二人で決めたことを守るための大切なやり取りであることを改めて確認し合いましょう。
つらさを伝えることと責め続けることは別
ただし、喧嘩のたびに浮気の話を出したり、夫が外出するたびに「本当はどこへ行くの?」と激しく責め続けていると、お互いに疲れ果ててしまいます。 このような日々が続けば、夫の方から「もう限界だ」と離婚を切り出されてしまう可能性もあるでしょう。 ただ、これは「一度許したのだから、二度と口にしてはいけない」ということではありません。つらい気持ちを伝えることと、責め立てることは違います。 大切なのは、過去の出来事を責めるのではなく、「今はこういう理由で不安になっている」と、正直に伝えることです。 伝え方を少し変えるだけで、感情を我慢しすぎることなく、二人で関係を築き直していくことができます。
再構築を試した後に考え直すこともできる
それでも、何年も一人で耐え続けた結果、体調を崩してしまったり、子どもにまでイライラをぶつけてしまったりする方もいます。 再構築は、一度決めたら絶対に取り消せないものではありません。頑張ってみたけれど、「やっぱり許せそうにない」と気づいたなら、その時点で別居や離婚をもう一度考えてみることもできます。 関係を続ける努力をしてみた結果として、別の道を選ぶことも十分にあり得る選択肢だと知っておいてください。
離婚に向けて別居する場合のメリット・デメリットと注意点は、以下で解説しています。
関連記事離婚前に別居するメリット・デメリット|期間・生活費・住民票の注意点 →誓約書について法的な問題も確認したい場合は弁護士へ
夫婦で話し合ったルールを、「二度と同じことを繰り返さない」というお互いの気持ちの確認として、自分たちでメモや誓約書に残すことはひとつの方法です。 ただ、「いざというときに法的な効力を持たせたい」という場合は、弁護士のアドバイスを受けたり、「公正証書」という公的な書面にして残すほうが安心です。 たとえば、「今回は許すけれど、次に同じことをしたら今回の分も含めて慰謝料を請求したい」と考えたとき、単に「許す」と伝えたことが法的にどう扱われるかは、ケースによって判断が分かれます。また、誓約書に「全財産を没収する」といった極端な条件を書いても、法的には認められません。 弁護士への相談は、離婚を決めたときだけにするものではありません。「自分たちで決めた条件に法的な問題がないか確認してもらいたい」「離婚しないことを前提に、今後どのように進めればよいかアドバイスがほしい」といった場合にも相談できます。 迷いや不安があるときは、一度、法的な視点から助言を受けてみてはいかがでしょうか。
過去の不倫について後から慰謝料を請求する場合は時効にも注意が必要です。起算点は以下で解説しています。
関連記事不倫慰謝料の時効はいつから?3年・20年の起算点と止める方法 →よくある質問
∨ Q1. 許すと相手に伝えた後でも、慰謝料は請求できますか?
請求すること自体は可能です。ただし、認められにくくなったり、金額が下がったりすることがあります。
たとえば「もう責めない」と受け取られる対応をしていた場合、後から「請求しない約束だった」と主張される可能性があります。法的には、こうした許しの態度を宥恕(ゆうじょ)と呼びます。明確な放棄とまではいえない場合でも、発覚後に同居を続けて関係が修復されたとみなされると、金額が下がる要因になります。
なお、請求できる期間は原則として、浮気の事実と相手を知ったときから3年です。判断に迷う場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
∨ Q2. 「病気だから仕方ない」と割り切って許してもよいですか?
自分の心を守るための考え方として、そう割り切ること自体は否定されるものではありません。
ただし、割り切ることと、相手の責任がなくなることは別です。関係を断つこと、今後の状況を共有することなど、最低限のルールは決めておくことをおすすめします。
∨ Q3. 夫婦ではなく恋人(未婚)の浮気でも、誓約書は有効ですか?
当事者どうしの取り決めとして誓約書を交わすことは、婚姻の有無にかかわらず可能です。関係を断つことや、違反した場合の取り扱いを書面にしておく意味はあります。
ただし、相手の自由を過度に縛る内容や、著しく高額な取り決めは効力が問題になる可能性があります。現実的な範囲で条件を決めることが大切です。
なお、単なる交際関係の場合、既婚者の不貞行為と同等の慰謝料請求は難しいのが実情です。婚約が成立している場合や内縁のように実態として夫婦に近い関係であれば、慰謝料の請求が認められることもあります。