破産した人の氏名や住所を転載したサイト「破産者マップ」(現在は閉鎖中)に対し、緊急性が高く、重い行政処分である「緊急命令」を出すよう求める申出書を、弁護士60人が連名で3月18日、個人情報保護委員会に提出した。緊急命令は、「破産者マップ」の運営者に対し、「個人データを第三者に提供してはならない」と命令するもの。
取りまとめをしたのは、大島義則弁護士と板倉陽一郎弁護士。大島弁護士は、口頭による行政指導や勧告に比べ、より重い「緊急命令」を求めたことについて、「プライバシー侵害が数十万件におよび、かつてない規模の案件であり、緊急性も高かったため、『緊急命令』を求めました」と説明している。
並行して個人情報保護委員会でも行政指導を行い、「破産者マップ」の運営者は3月19日、サイトの閉鎖を発表。しかし、大島弁護士は、「ドメインは維持されており、簡単に復活できることから、緊急命令を求めていきたい」としている。
●被害は数十万件、「破産者の被る害悪は重大」
申出書によると、「破産者マップ」には官報に掲載された破産手続きを行った人の氏名や住所をGoogleマップにプロットする形で公表。東京都だけで3万7000件以上におよび、少なくとも数十万件が掲載されていたとみられる。
これは「個人データの第三者提供」に該当するが、運営者は公表にあたって本人の同意を取得しておらず、オプトアウトの届出も行っていないことから、個人情報保護法23条1項に違反するとしている。
申出書は、「破産等情報は官報に公表された情報ではあるものの、広く検索可能な形で流通されることを意図された情報ではなく、『破産者マップ』のように広くこれが公表されていることは破産者個人のプライバシーを侵害し、ひいては社会生活上多大な害悪をもたらす」と指摘。氏名による検索はできないものの、Googleマップ上のプロットによって住所がわかっていれば容易に探せることから、「人口の少ない集落であれば近隣住民が破産者等であるかどうかを網羅的に閲覧することができ、破産者の被る害悪は重大」と断じている。こうした理由から、緊急命令以外に救済方法はなく、個人情報保護法42条3項にある「緊急に措置を取る必要」があるとしている。
大島弁護士は、「呼びかけに対して、弁護士60人が数時間で結集しました。日々の破産業務を担当している中、このサイトに問題意識を感じる人が多かった。被害は数十万件におよび、(当初)すぐに閉じていただければと困ると考えたため、緊急命令が適切な処分だと考えた。サイトの復活可能性もあるため、命令については引き続き、求めていきたい」と話している。