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自動運転中、食事はOKでも飲酒がダメな理由…「道交法改正試案」を考える
写真はイメージ(foly / PIXTA)

自動運転中、食事はOKでも飲酒がダメな理由…「道交法改正試案」を考える

警察庁は、一定の条件のもとで、車を自動走行させて、緊急時はドライバーが操作する「レベル3」の自動運転を可能とする道路交通法の改正試案を公表し、パブリックコメントを募集している。

報道によると、レベル3では、渋滞中の高速道路など特定の条件に限り、車のシステムが全ての運転操作を行う。自動運転中は、スマホの使用や食事なども可能になる。東京五輪が行われる2020年前半の施行を目指している。

ただ、やはり気になるのが事故時の責任問題だ。今回の試案から、どう考えればいいのか。小林正啓弁護士に聞いた。

●想定している「レベル3」の仕組み

まず、自動運転のレベル3とは、どのようなものか。

「レベル1(運転支援)、レベル2(部分運転自動化)までは人間が運転の責任を負い、事故の責任も負います。一方で、レベル4(高度運転自動化)、レベル5(完全運転自動化)は原則として運転者を必要としません。レベル3はその中間にあり、自動運転時はシステムがすべての動作を担い、それが困難なときには警告を発して人間に運転操作を移行することを想定しています。

そのため、自動運転時はレベル4であり、人間が運転を引き継いだ後はレベル2か1となります。したがって、レベル3固有の問題は、システムから人間への運転操作の引き継ぎに関連して発生することになります」

●克服すべき課題

どのような問題が起きる可能性があるのか。

「警察庁の作成した道路交通法改正試案によると、レベル3の自動運転中にはスマホの使用等を許可するとありますが、自動運転中はレベル4であって人間は運転の責任から解放されるので、運転以外のことができなければ意味がありません。

その一方で、人間による運転の引き継ぎが想定される以上は、飲酒の禁止が維持されることについては、当然といえます。

つまり、レベル3の自動運転で、運転席に座った人間は、自動運転中は運転に専念する義務から解放される一方、『いざというときには直ちに手動運転に復帰できる状態を維持する』法的義務は依然として課せられています。その義務に違反して事故が起きたときは、民事・刑事の法的責任を免れない、ということになります。

具体的には、システムが人間による手動運転への移行を要請しているのに、それに気づかなかったり、気づいても対処が遅れたりして、事故が起きてしまった場合には、運転席に座った人間に法的責任が課せられる、ということになります。

一見合理的な結論のようですが、この試案が施行されるためには、システムからの運転移行要請が適切に発せられることや、人間の対処が遅れても安全側に動作するシステムとなっていること、自動運転と手動運転が競合したときの安全装置等、様々な技術的課題が克服される必要があるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

小林 正啓
小林 正啓(こばやし まさひろ)弁護士 花水木法律事務所
1992年弁護士登録。ヒューマノイドロボットの安全性の問題と、ネットワークロボットや防犯カメラ・監視カメラとプライバシー権との調整問題に取り組む。

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