小林 正啓 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
大学生までは、特に志望も無く、偏差値の示すとおりに進学したのですが、3年生のころ、このままでいいのかな、と思いました。父が裁判官だったこともありますが、法曹という資格を得て、自由で力の発揮できる職業に就きたいと思ったことが動機でしょうか。
仕事の中で嬉しかったこと、大変だと感じること
法律家として必要とされ、感謝されることが最も嬉しく感じます。世の中というのは、常に混乱し、また、立場によってさまざまな見方ができるわけですが、その中で、法律という考え方を使えば、物事をかなり整理できる、ということを、たくさんの人に知ってもらえることは、嬉しいことです。
ただ、法律を適用することによって、必ずしも利益を得られない依頼者もいるわけで、そのような依頼者を説得しながら、妥当な結論に持っていくのは、いつも苦労します。
仕事をする上で意識していること
駆け出しの頃、ベテランの弁護士を見て、「占い師と一緒だ」と思いました。依頼者がどういう人物で、何に悩み、弁護士に何を聞きたいのか、すぐわかってしまうという、文字通り「座って5秒でぴたりと当てる」有様を目の当たりにしたからです。
そうして依頼者を素早く理解できる人は、その案件についての見通しも早期に立てることができます。まだまだそのレベルに達しませんが、事件の未来、依頼者の未来を見通せる感覚を身につけたいと思っています。
関心のある分野
依頼を受ける事件は、家事や倒産、債権回収など、ごく普通の事件ですが、弁護士が余り関わっていない分野として、次世代ロボットの安全性の問題や、ユビキタス技術とプライバシーの問題、外為法(武器輸出規制)の問題に興味を持っています。
これらはまだ具体的に社会と関わりを持っていない、産業としてまたは制度として成熟していないか、法規制が強すぎるために、現在はこれらの問題に関わる弁護士がほとんどいませんが、これらが盛んになり、法律家が必要になる時代はいつか来るし、その時は私自身も是非関わりたい分野です。
性犯罪再犯予防対策とプライバシーの問題について
性犯罪者の一部には、再犯率の高い人がいることは事実ですし、特に、子どもに対する性犯罪が被害者に与える影響は大きく、社会的に予防する必要性は高いと思います。また、ユビキタス技術の進歩により、特定の個人を自動的に識別し追跡するシステムが構築可能になっています。
そこで、これを組み合わせて性犯罪前歴者を監視しようという動きが出てきていますし、欧米・韓国等では実施されつつあります。ですから、プライバシーとの関係で言えば、一定の要件の下で、わが国でも認められる可能性はあると、私は考えています。ただ、条例ではなく、立法レベルの対処が必要と考えます。
他方、これらの技術には、未完成の部分が多く、インフラとして普及していないので、監視技術として本当に有用であると証明されたわけではありません。また、電子監視は監視されている本人に社会的疎外感を与え、これが社会復帰を困難にして、新たな犯罪に導くおそれも否定できません。
たとえるなら、島流しにされた罪人に入れ墨をすることにより、一生カタギとして生きていけなくするようなものです。人間の社会というのは、もともと、とても混沌としているものであり、常に危険因子を内包しているものですが、それがある新技術によって、きっぱりと解決する、という考えは幻想であり、危険なことだと思います。
今後の弁護士業界・日弁連の動向
私が司法試験に合格した平成元年は、合格者は500人でした。その後どんどん合格者が増え、現在は年2000人になっています。これも一つの原因になって、就職できない弁護士、食えない弁護士が大量に発生しています。弁護士はもはや、食える資格ではなく、社会的に尊敬される資格でもなくなりつつあり、日弁連は、若手弁護士の不満に対処できず、組織として瓦解しつつあります。
こうなった経緯について、私はもともと無関心でしたが、あるきっかけから調べていくうちに、日弁連という組織の中に、深刻な構造的問題があることに気づきました。それは簡単に言うと、頭でっかちで書生論を振り回すリーダーが、大多数の無関心層を熱狂させて、組織の破滅に突き進む、という構図です。たとえるなら、戦前の軍部と国民の関係に近いかもしれません。
つまり、この構図は、日弁連や軍部だけでなく、日本の組織に共通する病理現象だと考えます。この有様を、『こんな日弁連に誰がした?』(平凡社新書)という本にまとめて出版しましたので、興味のある方はお読み下さい。