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非正規滞在の収容長期化「夫は悪いことしてない」「子ども泣いてる」、家族が苦境訴え
被収容者の妻

非正規滞在の収容長期化「夫は悪いことしてない」「子ども泣いてる」、家族が苦境訴え

非正規滞在の外国人たちが、長期間にわたって入国管理局の施設に収容されたり、理不尽な強制送還にあったりするなど、深刻な人権侵害を受けている――。学生や社会人を中心とした支援グループが9月18日、東京・永田町の参議院議員会館で院内集会を開いて、国に対して、収容のあり方の見直しをもとめた。また、被収容者の妻が登壇して、「夫はなにも悪いことをしていない」とうったえた。

●「実情から乖離している」

院内集会の主催は、「長期収容に反対する全国ネットワーク」と、学生を中心としたグループ「BOND」(バンド・東京)、「START」(スタート・東海)、「TRY」(トライ・大阪)。今年7〜8月、各地の収容施設をおとずれて、実態調査をおこなったところ、収容期間が長期化していること、まともな医療を受けられていないこと、残された家族が追い詰められていること――などがわかったという。

支援団体・バンドのメンバーである男性(高校3年)は「非正規滞在者に対する不当な人権侵害が、なぜ繰り返されているのか、1人の人間として、若者として純粋に疑問をおぼえます」「非正規滞在者の中には、(難民など)日本で生活し続ける妥当な理由を有している人がいます」「帰国が見込めないのに、長期・複数回にわたって収容するのは、実情から乖離していて、見直すことが必要です」と述べた。

●被収容者の妻「わたしは疲れた」

入管の施設をめぐっては、被収容者の自殺が発生するなど、その内部の環境がクローズアップされている。また、収容の長期化は、家族にも暗い影を落としている。この日の集会には、約1年8カ月間収容されているトルコ籍のクルド人男性、カラコール・オマルさん(32)の妻と子ども3人が登壇。妻のセムラさん(32)は「わたしは疲れた」と涙を流しながら語った。

支援団体・スタートの桐田真衣さんによると、クルド難民として来日したオマルさんは2017年1月、仮放免の手続きで、妻と一緒に入管に来たところ、そのまま収容された。残されたセムラさんは当時、日本語ができず、どうやって入管から家に帰るかもわからないような状態だったという。

しかも、セムラさんは、次女・アダちゃん(現在:1歳3カ月)を妊娠しており、一家の大黒柱を失ったまま、1人で出産することになった。「子ども、1歳3カ月なったのに、(夫は)まだ出れてない」「子どもたち毎日、『パパどこ』言う。いっぱい泣いてる」「(夫は)ビザ切れたけど、なにも悪いことしていない」(セムラさん)

セムラさんは今年に入って、事故にあったうえ、うつ病と診断されるなど、身体的にも精神的にも追い込まれているという。桐田さんは「今からトルコに帰って生きていくことはむずかしい。被収容者の家族からも犠牲者が出る可能性があります」「外国人にも基本的人権がある。家族と過ごす権利や、病気を治す権利があります」と強調した。

●「韓国に一緒に帰って住めばいいじゃない」と言われた

こうした長期収容化は、日本人にも影響が出ているようだ。この日の集会に登壇した日本人男性の場合、妻(韓国籍)が収容されてから、1年9カ月が経つ。以前も1年半収容されており、男性はこの4年の正月、いずれも妻と過ごせていない。

「うちの連れ合いは、犯罪をおかしたわけではない。なぜこういう状況におかれているのか。これまで入管なんていう話も聞いたことがなかった。たまたま外国人の連れ合いを持ったために、こういう問題に入りこんでしまった」(男性)

「入管の話なんて、だれも知らない、聞いたことない、そんなひどいことが起きているなんて、だれも思っていない。日本人がやっているんですよ。外国人がやっているんじゃない。日本人がやっているんです。いじめているんです」(男性)

男性はこの日の集会で、かつて入管職員からひどい言葉を投げかけられたと明かした。「『(妻を連れて)韓国に一緒に帰って住めばいいじゃない』と言われました。なぜここまで言われないといけないのか、涙流す思いでした」。「後悔はしていませんが、なんとか救い出してやりたいと思っています」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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