アウトレットやデパートなど大型施設にある駐車場に入ろうとした際、「右折入庫禁止」の案内に阻まれてガッカリしたことはないだろうか。
東京都内在住の会社員男性(36)もそのひとり。2018年9月、都内のある施設の駐車場に入ろうとしたら、「右折入庫禁止」という標識があり、迂回せざるを得なくなった。「この看板のために、1km以上遠回りする羽目になった。施設の入り口までは公道なので、公道のルール内であれば自由に走っていいのでは」と納得がいかない様子だ。
誘導員が申し訳なさそうに右折入庫を断ることもあれば、そうでなく高圧的な態度で入庫を阻まれた経験もあり、以前から気になっていた。「基本的に右折入庫禁止に従うのが当然になっているようで、モヤモヤする」と男性は話す。
「右折入庫禁止」の案内は法的に従わなければならないのか。西村裕一弁護士に聞いた。
●公道なら「任意」、でも事故を起こしたら過失割合が大きく
ーー公道から施設の駐車場に右折で入るのを禁じる「右折入庫禁止」という案内(表示)に従う義務は法的にありますか
「公道から施設に入る場合、基本的には公道が右折禁止場所となっていない限りは、法的には右折して施設に入ったからといって道路交通法に違反するわけではありません。その意味では、警備員の案内に従うかどうかは任意となっています。
もっとも、右折して施設に入る場合、右折待ちによる交通渋滞が生じる可能性があります。それが常態化して問題となっている場合、警察から施設に対して、警備員を配置するように指導しているケースがあります。ですので、警察に相談しても、『警備員の指示に従ってください』と回答される可能性があります。
また、警備員の誘導に従わずに、強引に施設に入ろうと右折し、対向の直進車と衝突した場合には、右折車の方が過失割合が大きくなるので注意は必要です」
●駐車場内なら従うのが妥当
ーーでは、駐車場内(私道)での移動で、例えば入庫や出庫の際に「右折禁止」や「左折禁止」などの表示があります。この場合、従う義務はどう考えればいいでしょうか
「施設内の交通ルールに関しては、施設の管理者に決定権、管理権があります。したがって、先ほどの事例と同じく道路交通法違反の問題は生じませんが、万が一、駐車場内の標識に違反したことにより交通事故が発生した場合には、事故の過失割合が相手方との関係で大きくなってしまう可能性が高いです。
これはショッピングセンターやコンビニなどでの交通事故だけでなく、工場内の交通事故においても同様です。そのため、私有地の移動については、施設内の標識やルールにきちんと従うのが妥当でしょう」
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