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未婚ひとり親を「いじめる」税制、ようやく見直し 寡婦(夫)控除の対象拡大へ
写真はイメージです(プラナ / PIXTA)

未婚ひとり親を「いじめる」税制、ようやく見直し 寡婦(夫)控除の対象拡大へ

結婚歴がないシングルマザー(ファザー)は、結婚歴があるひとり親よりも税金の負担が重いーー。

「生き方が多様化するなか、こんな不公平な税制がまだ残っているのか」などという批判がかねてからあったが、厚生労働省は来年度の税制改正要望で見直しをめざす方針だと報じられている。未婚のひとり親にも控除の恩恵が認められることになり、朗報と言えそうだ。

●所得税・住民税の負担軽く

制度は「寡婦(夫)控除」というもので、12月31日時点の現況を基準に、一定の条件を満たすと所得税や住民税が軽くなる。

いくつかの条件があるが、例えば、夫と死別または離婚したのちに婚姻していない人や夫の生死が明らかでない人で、子ども(総所得金額等が38万円以下)がいると、27万円の所得控除が認められる。詳細は国税庁HP(https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1170.htm )。

イメージしやすいよう、「年収が300万円の企業勤めのシングルマザー」という仮のケースをもとに、寡婦控除があるのとないのとではどう違うのか、考えてみる(復興特別所得税は考慮しない)。

まず、給与所得控除は300万円×30%+18万円=108万円となる。寡婦控除の27万円も加味すると、給与所得は300万円-108万円-27万円=165万円で、つまり165万円に対して税がかかることになる。寡婦控除がなければ192万円に対して税がかかるので、そのぶん税負担は重くなる。

所得税は165万円×5%(適用される所得税率)=8万2500円で、寡婦控除がない場合だと192万円×5%(適用される所得税率)=9万6000円となる。寡婦控除が認められている方が、所得税だけでも年間の税負担は1万3500円も軽い。住民税も考えれば、より税金の負担は軽くなる。

●課税の公平性の観点から不公平ではないか

今回の見直し報道について、田村麻美税理士に聞いた。

ーー寡婦控除を知らずにいる人もいそうでしょうか

「はい。そもそも寡婦控除を知らず、申告されていない方も多いのではないでしょうか。残念ながら、情報弱者が損をする世の中です。損をしていても誰も教えてはくれませんので、この寡婦控除に限らず、己に使える制度をキャッチする癖をつけられることをお勧めします。

現行の制度では、あくまで『過去に戸籍上婚姻関係の事実』があったうえでの離婚、死別でなければ寡婦控除を受けることができません」

ーー戸籍を重んじるあまり、公平性を逸していると感じます

「寡婦控除にかぎらず、戸籍をいれていない事実婚の場合に配偶者控除がうけられないのと同じで、現行の日本の税制は戸籍を重んじています。寡婦控除がうけられない場合、所得税だけでなく、住民税、そして税金をもとに算定される保育料といったものにも影響があります。

同じシングルマザーであっても、過去の婚姻歴で差がでてしまうのは、課税の公平性の観点から不公平ではないかと考えます。戦後、戦争未亡人の救済策として導入された寡婦控除。婚姻関係など、時代はめまぐるしく変化しています。見直す時期にあるのではないかと思います」

【取材協力税理士】

田村 麻美(たむら・まみ)税理士

TRYビジネスソリューションズ株式会社代表取締役。税理士法人江波戸会計東京支社長。2014年8月に第1子出産。結婚を機に足立区で事務所開業。自転車に乗るのが好き。早稲田大大学院経営管理研究科(MBA)在学中。

事務所名   :TRYビジネスソリューションズ株式会社/ 税理士法人江波戸会計

事務所URL: http://try-bs.com/

http://www.kaikei-home.com/ebatokaikei/

(弁護士ドットコムニュース)

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