2017年12月11日 09時57分

業績数字ばかり追って「なんとかしろ!」文化では「ホワイト企業」になれません

業績数字ばかり追って「なんとかしろ!」文化では「ホワイト企業」になれません
大川原栄弁護士

「今までこれでうまく回ってきた」「従業員には経営者視点をもってほしい」。こんな考え方は、空前の人手不足時代を迎え、労働者の権利意識が高まった今、通用するはずがない――。11月10日に刊行された『めざそう!ホワイト企業』(経営者のための労務管理改善マニュアル)の責任監修を務める大川原栄弁護士はこう力説する。

「ホワイト企業」とは文字通り、労働者の立場を尊重し、労働基準法などを守った企業を指す。大川原弁護士は「経営者のなかには、現在の売り手市場を一過性のものと考えて、労働環境の改善に消極的な人もいます。しかし、少子高齢化による人口減少が続く日本で若い労働人口が増える見込みはない。企業は『労働者を選ぶ時代』から『労働者に選ばれる時代』になったのです」として、経営者に意識の変革をするよう訴えている。

企業が「ホワイト経営」をする効果とは何か。大川原栄弁護士に聞いた。(ライター・亀田早希)

●ホワイト企業への第一歩は経営者の意識改革から

ホワイト企業になるために最も重要な点について大川原弁護士は「経営者の考え方の転換」であると考えている。たとえば、これまで業績につながる数字にばかり着目してきた経営者は、数字に直接的に表れない「仕事への意欲」や「企業への信頼感」が社員の中に育っているかを注意してチェックする必要がある。

「『社員がダラダラ働いて無駄な残業をしているから、残業代を払いたくない。解雇したい』という相談は、経営者自身が正当な手順を踏んでいないことを棚に上げた勘違いといえます。ダラダラやっているように見える仕事の原因を分析し、社員への指示を見直し、研修や指導を通じた適切な業務命令によって改善していく義務を経営者は負っているのです」

そんな場合に、経営者や管理職が直接対処を行わず、現場に「なんとかしろ」と丸投げするような企業文化ではまるで効果がないという。

「社長や管理職が自ら関わり、場合によっては直接残業の場に同席し、早期に原因を突き止め、適切な指導を行ってこそ、現場がスキルアップし、社員の企業への信頼感が形成されるのです。仕事のスキルが身に付けば、業務に誇りが持てるようになり、自ずと仕事へ一生懸命打ち込むようになるでしょう。つまり、ダラダラ仕事をする社員がいる問題は、社長や役員が自らの問題として捉え、真剣に対応することではじめて解消されホワイトな環境になるのです。

無駄に感じる残業代をカットしたり、解雇をしたりすることで解決するものでは決してありません」

●経営に理解を求める場合は、適切な手順を踏むことが必須

経営状況が苦しく、ボーナスをカットしたい。給料を1万円下げたい。こんな場合はどう従業員に理解を求めればよいのだろうか。

「まず、同じ1万円でも経営者と労働者は見える光景がまったく違うという点を頭に置いて行動すべきです。大局を見る経営者としては、『会社経営が立ち行かなければ雇用も守れないため1万円くらい我慢してほしい』と思う。一方労働者としては、『1万円でも、毎月となると家族の生活のレベルを1万円分落とさなければならない。こんな会社では働けない』と考える。これは大きな隔たりです」

将来に不安を抱く労働者に適切に経営者の思いが伝わらなければ、離職者が増え、企業は人手不足に陥ってしまう。労働者に対して極端に不利な条件になったり、違法な対処を行ったりしないためには、経営者に本気で力を貸す社会保険労務士やコンサルタント、弁護士などの専門家との協力が必要だと指摘する。

●ブラック企業に迫る「人手不足倒産」の危機

ブラックな労働環境で労働者を酷使するままでは、人材の流出による人手不足倒産の危険が高まる。

「既に大手企業は非正規雇用者を正社員化するなど、人材の囲い込みを始めています。以前は、現職を辞めて再就職をすれば待遇が下がるだけだった中高年の人材でも、再就職により待遇が改善する事例も増えてきました。このような状況のなかでは、従業員の待遇を改善する余力のないブラック企業は淘汰されていくでしょう」

人材を確保する方法はシンプルだ。企業をホワイト化して現在の従業員の離職を防ぎ、評判を上げることで新規従業員の獲得をスムーズに行えるようにすること。一朝一夕でできるものではないが、時代の流れは待ってくれない。

「今回刊行した書籍では、経営者が持つべき覚悟と労働法制の最低限抑えなければならない点をピックアップして解説しました。これを出発点として、まず自社が取り組むべきことは何かを考えていただきたいと思います」

大川原弁護士をはじめとする著者陣が結成する「ホワイト弁護団」は、一般社団法人「ホワイト認証推進機構」と提携関係にある。同機構は弁護士のほかに、社会保険労務士や、コンサルタントと提携しており、企業がホワイトな労働環境を整備するサポートを行い、労働法制を守っている企業には審査を経たうえで、「ホワイト認証」の取得を認め、また「ホワイト認証マーク」の使用を許諾している。

【書籍情報】

書名:『めざそう!ホワイト企業』(経営者のための労務管理改善マニュアル)

編集:ホワイト弁護団

出版社:旬報社

書籍情報:http://www.junposha.com/book/b325280.html

(弁護士ドットコムニュース)

大川原 栄弁護士
第二東京弁護士会所属。一般社団法人ホワイト認証推進機構理事。会社経営全般への法的助言、取引トラブルへのアドバイスのほか、不動産取引をはじめとする一般民事事件や、相続・遺言、離婚などの家事事件を取り扱う。

事務所URL:http://tsp-law.jp/
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