元不倫相手やその配偶者から嫌がらせをされている。慰謝料を支払えば「過去の不倫の精算」はできるのかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、このような質問が寄せられた。
相談者は、職場の既婚男性と不倫関係にあり、4年前に別れた。「相手方は離婚しておらず、こちらからの謝罪や慰謝料等の対応もしていません」。
その後、相談者は結婚し、子どもも生まれた。しかし、最近になって元不倫相手の妻が、相談者の住所を特定。元不倫相手も、相談者やその夫に週に何度か嫌がらせのメールを送りつけてくるようになった。さらに、相談者の家を何度も見に来ているという。
相談者は不安に怯えており、何としても接触してくるのをやめさせたいと考えている。そこで、「慰謝料を払うことで、今後近づかない等の書面が得られるならそうしたいと思っていますが、可能でしょうか?」と聞いている。
そもそも、別れた後も接触をはかってくる相手やその配偶者の行為に法的な問題はないのか。このような干渉を防ぐためには、どのような手段が考えられるか。菅野朋子弁護士に聞いた。
●接触をやめさせるためには?
「メールだけであれば、メールアドレスを変えてしまえばよいのですが、変えることができない場合や実際に家の周りに来る場合は、接触をやめさせるための方法から検討しましょう。まず、元不倫相手やその妻に対して、迷惑行為をやめてほしい旨の通知をします。通知の方法としては、内容証明郵便の送付が有効です。
なお、相手方の行動が刑事責任を問われる可能性もあります。送られてくるメールに脅迫するような文言がある場合は『脅迫罪』に該当しますし、元不倫相手が家を何度も見に来る行為は、ストーカー規制法のつきまといに該当し得るものです。そこで、通知する際には、警察にも相談することを伝えます。そうすれば、やめる可能性もあります」
それでも被害が続いたら、どうするべきか。
「やめなければ警察に相談してください。犯罪に至らない程度の嫌がらせの場合でも、『やめなければ法的措置を検討する』と確固たる姿勢を見せてください」
ただ、相談者は相手が既婚者と知りながら、関係を継続してしまった。今はすでに別れているとは言え、逆に、過去の不倫を理由に慰謝料を請求されることにはならないか。
「相手が慰謝料の支払いを求めてきたら、嫌がらせ行為をやめさせるために慰謝料を支払うことも考えられます。なお、慰謝料の時効は、被害者が損害および加害者を知ったときから3年ですが、加害者があえて時効を主張せず、支払うことに問題はありません」
相談者は「過去の不倫の精算をしたい」と考えているようだ。
「場合によっては、あえて、こちらから慰謝料の支払いを提案することも考えられます。いずれにしろ、いずれの流れでも大事なのは、慰謝料の支払いとともに『今後お互い接触しない』という接触禁止条項をいれた合意書を作成することです。たしかに、相手の行動を強制的に制限することはできないので、接触禁止条項に強制力はありませんが、一定の抑止力はあります。できれば、違反した際の違約金を規定しておけば、より効果的です」