2017年12月09日 09時34分

タフな老人力、法廷の「アウト老」…不利な質問に「聞こえない」、車椅子アピール

タフな老人力、法廷の「アウト老」…不利な質問に「聞こえない」、車椅子アピール
「暴走老人・犯罪劇場」(洋泉社)

ボケる・トボける・シラをきる――。12月5日に出版された『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社)は、そんな高齢凶悪犯罪者たちの傍聴記である。著者で、傍聴ライターとして活動している高橋ユキさんは、本書で彼らを「アウト老(ロウ)」と命名し、法廷でのリアルな姿を綴っている。

この数年、高齢者による凶悪犯罪に注目して傍聴を続けてきた高橋さんに、法廷で見たアウト老たちの実態について聞いた。

●「高齢者とは思えない体力勝負の犯罪に手を染める」

――「アウト老」というダジャレ、名称は、高橋さんが作ったのでしょうか

「傍聴を通して見た彼らに、何かしっくりくる呼称をつけたいなと思ってつけてしまいました」

――本書を読むと、殺人や窃盗などの犯罪に手を染めたアウト老たちの小狡さが印象に残ります。高橋さんは、刑事裁判を中心に様々な傍聴をされていますが、なぜ今回、アウト老に注目したのでしょうか

「高齢者の犯罪が増えていることは、最近よくニュースになり、知られている話だと思います。これまで様々な刑事裁判を傍聴してきましたが、実際に、高齢の被告人を目にすることが増えた実感もあります。介護殺人や貧困からの窃盗など、止むに止まれぬ事情から犯罪を犯す高齢者だけでなく、ものすごく身勝手な理由で凶悪犯罪を犯す高齢者もいます。

データを調べてみると、高齢者の検挙数が高齢化社会に伴う高齢者人口の増加の勢いを上回っていた時期がありました。そして現在、各世代の中で最も検挙人員が多いのが65歳以上の高齢者です。

健康寿命が伸びてきたことが影響しているのか、高齢者とは思えない体力勝負の犯罪に手を染めていたりしているんです。高齢者がなぜここまで、というギャップに興味を持ち傍聴を続けており、それをひとつの形にまとめたいと考えていました」

●老人力を活かして「覚えていない」

――コンビニの店長が自分の店に強盗を装って入ったあげく従業員を刺殺したり、時限発火装置を作って放火殺人を犯したりなど、事件のディテールも面白いんですが、法廷での言動もかなり不可解ですね

「法廷で『耳が遠いから質問がよく聞こえない』と言ったり、老人力を活かして『覚えてない』と言ったりするのは鉄板です。ただ、実際には聞こえているんですよ。弁護人の話は聞こえるのに、自分に不利な質問をする検察官の声だけ『聞こえない』と言ったりしますから。

あと、体の調子が悪いとか、孫に会いたいとか同情を誘おうとする被告人もすごく多いです。『逮捕されてから足が痛い』と被告人質問で訴えていたのに、質問が終わると足をかばうこともなくスタスタ歩いていたりします。もっと痛そうにした方がいいんじゃないの? って思ってしまうのですが」

●犯行時は歩けたのに、法廷では「車椅子」

――高齢者が持つ「武器」を法廷で使っているように見えます

「そうですね。老化現象をうまく利用していると感じます。先ほどの『聞こえない』『覚えていない』もそうなんですが、車椅子で法廷にやってくる被告人などはその最たるものだと思います。半年ほど前の犯行時は歩けていたし、体力のいる事件を起こしたはずなのに、なんで車椅子になってるの!?って。まあ、逮捕後体力が落ちたなどの事情もあるのかもしれませんけど。

でも、相当ひどい犯行を犯したのに、法廷ではそのように弱者として振る舞う姿にも、逆にタフさを感じてしまい、彼らから目が離せなくなってしまいました」

●「アウト老」の2つの共通項

――「アウト老」に共通項はあるのでしょうか

「いくつかあります。まず、完全な貧困状態ではなく、あくまでも自分比で、かつてより貧乏になっていること。会社を立ち上げてすごく儲かっている時代もあったのに、なんだか景気が悪くなってきた、というような方が多いです。

そのように良い時期があったのでプライドも高く、何かトラブルが起こるとその相手を許せなくなってしまうのかなと感じてます。男性が多いのも特徴です。自分比で貧乏になってしまったことでそのプライドが傷ついていたりします。

次に不寛容なこと。隣人トラブルをきっかけとして『アウト老』になった事例を、本には複数入れています。あえてそうしたわけではなく、単に見てきた中で隣人トラブルを抱えていた事件がいくつもあった。65歳以上の高齢者だけでなく還暦あたりから目立ちます」

――アウト老たちは「もう老い先短いからどうなってもいい」という捨て身な動機で犯罪を犯すのでしょうか

「そうとは限らないですね。刑務所に入れば衣食住が確保されますし、それ狙いで犯罪を犯す人もいますが、アウト老に関して言えば、そこはあまり事前に考えていない印象を受けます。それよりもプライドが傷つけられたとか、いろいろな事情で、被害者に対する恨みが爆発してしまう人が多かったです。

その恨みから、完全犯罪を計画するんですが、それもハタから見てすごく杜撰だったりする。客観性を見失っているというか。私も根に持ったり、深い恨みを持ちやすいので、今後気をつけたいですね」

【書籍情報】

タイトル:暴走老人・犯罪劇場

http://www.yosensha.co.jp/book/b329895.html

著者名:高橋ユキ

出版社:洋泉社

【取材協力】高橋ユキさん

フリーライター。1974年生まれ。プログラマーを経て、ライターに。中でも裁判傍聴が専門。2005年から傍聴仲間と「霞っ子クラブ」を結成(現在は解散)。主な著書に「霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記」(霞っ子クラブ著/新潮社)、「木嶋佳苗 危険な愛の奥義」(高橋ユキ/徳間書店)など。好きな食べ物は氷。

(弁護士ドットコムニュース)

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