「50年前に別れた女性に、もう一度会って謝りたい」──。
そんな思いから、かつて交際していた女性を探す男性の投稿がSNSで注目を集めました。
男性によると、交際は約50年前のことだったそうです。しかし、男性の母親が女性に「息子は結婚するから、もう電話をかけないで」と事実とは異なることを伝えたため、関係が途絶えてしまったといいます。
現在70代となった男性は、女性に謝罪したいとして、SNSに女性の当時の氏名や居住地域などを書き込み、「確実な情報」を持つ人に情報提供を呼びかけています。
長い年月を経ても相手を探したいという気持ちがあるのでしょう。一方、女性にとっては、本人の知らないところで、実名や昔の居住地、過去の交際関係などが不特定多数に公開されることになります。
たとえ悪意のない「人探し」であっても、本人の承諾なくこうした情報をSNSで公開することに、法的な問題はないのでしょうか。濵門俊也弁護士の監修のもと、解説します。
●「50年前の情報」でもプライバシー侵害になる可能性
──今回のように、約50年前に交際していた相手を探すため、本人の承諾なく、実名や当時の居住地域、年齢、過去に交際していた事実などをSNSで公開することに問題はないのでしょうか。
プライバシー侵害にあたる可能性があります。
一般に、私生活上の事実や、本人が通常は他人に知られたくないと考える情報を、正当な理由なく不特定または多数人に公開した場合、プライバシー侵害として民法上の不法行為が成立することがあります。
氏名や昔の居住地域だけであれば、それだけで直ちにプライバシー侵害になるとは限りません。しかし、今回のように、氏名や居住地域に加えて「約50年前に投稿者と交際していた」という私生活上の情報まで結びつけて公開している点には注意が必要です。
特にSNSは、投稿が不特定多数の目に触れ、第三者によって拡散される可能性があります。複数の情報を組み合わせることで、本人だけでなく、家族や昔の知人、地域の人などが「この人ではないか」と特定できる場合も考えられます。
「50年前の出来事だから自由に公開してよい」ということにもなりません。長い時間が経過していることは判断材料の一つになり得ますが、過去の交際関係など、年月が経過しても本人が他人に知られたくないと考える私生活上の事実はあり得ます。
また、投稿者に悪意がなく、「謝りたい」「もう一度会いたい」という目的だったとしても、それだけでプライバシー侵害が否定されるわけではありません。投稿の目的や必要性、公開された情報の内容、公開範囲、本人が受ける不利益などを総合的に考えることになります。
つまり、相手を探したいという気持ちと、そのために本人の情報を広く公開してよいかどうかは、分けて考える必要があります。
●第三者が「今の住所」を教えたら?
──呼びかけによって、第三者が本人の現在の姓や住所、勤務先、連絡先などを投稿者に伝えた場合、情報を提供した人にも問題が生じる可能性はあるのでしょうか。
第三者が情報を提供しただけで直ちに違法になるわけではありません。
一方で、現在の住所や電話番号、勤務先などは、本人がみだりに他人に知られたくないと考える可能性が高い情報です。情報の入手経緯や内容、提供する相手との関係、提供する必要性などによっては、情報を渡した側についてもプライバシー侵害などが問題となる可能性があります。
また、投稿を見た人が「この人を知っている」と思っても、本人の了承を得ずに住所や電話番号などを投稿者に直接教えることは避けた方がよいでしょう。