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ベッド写真に「浮気調査」…人気女性声優を襲った真偽不明のX投稿 「名誉毀損の問題あり」弁護士警鐘
写真はイメージです(C-geo / PIXTA)

ベッド写真に「浮気調査」…人気女性声優を襲った真偽不明のX投稿 「名誉毀損の問題あり」弁護士警鐘

突然Xに投稿された人気女性声優に関する真偽不明の情報が広がり続けている。

7月24日未明に問題のポストを投稿したのはアイドルのタレコミ情報を暴露する匿名アカウントだ。ある女性声優の名前や写真を示したうえで、「浮気が発覚」などと指摘している。

また、これも女性声優本人か定かではないが、裸に見える女性がベッドに布団をかぶった状態で寝転がっている写真や、探偵に依頼したと思われる「浮気調査」の写真も一緒に公開した。

「浮気調査」の写真は調査対象者の住所こそ塗りつぶされていたが、名前欄は本人の実名か不明ながら本人の実名か不明ながらそのまま公開されていた。これが本当にこの女性声優を対象にした浮気調査の資料なのかも不明ながら、この女性声優の名誉を傷つけるものではないだろうか。

インターネットの問題に詳しい清水陽平弁護士は、複数の法的な問題があると指摘する。

●プライバシー侵害や名誉毀損の成立が考えられる

——法的な問題としてどんなことが考えられますか

民事上はプライバシー侵害や名誉毀損の問題が生じます。

まずプライバシー侵害について検討します。

「浮気が発覚」したとして、裸に見える女性がベッドに寝転がっている写真や、LINEのやり取りが掲載されていますが、これらは本人のものであるか不明です。

それでもプライバシー侵害の問題が生じるのは、私生活上の事実らしく受け取られるものであればプライバシーの問題となるからです。

今回のケースでは、本人の名前や宣材写真も一緒に掲載されているので、ベッド写真やLINEのやり取りは、本人のものと見られることになります。

そして、誰とどう交際しているかや、本人のものと受けとられるやりとりの内容は一般的には私生活上のものといえます。

こうしてプライバシーの問題が生じるとしても、それを報じることが公益にかなうなど、公表する理由が公表されない利益より優越する場合には、プライバシー侵害にはならないとされます。

今回のケースでは、仮に浮気をしていたとしても、誰かと婚姻をしているわけではないことを踏まえれば、公表する理由が公表されない利益より優越する場合には当たらないように思います。そもそも本人と無関係だとすれば、当然に公表する理由が公表されない利益より優越する場合には当たらないでしょう。

したがって、いずれにしてもプライバシー侵害が成立することになるのではないかと思います。

——法的に名誉毀損も成立するでしょうか

社会的評価の低下を招く発信をすることは名誉毀損になり得ます。

浮気をしているというのは、婚姻をしていないとしても一般社会で批判の対象になり得ることからすれば、社会的評価の低下があるといえそうです。

もっとも、その場合でも公共性、公益目的、真実性があれば違法性がないとされる可能性があります。

今回は、そもそも本人と無関係なものだとすれば、真実性がなく違法性があることになります。また、発信の目的は必ずしも明らかではありませんが、晒すこと自体が一つの目的と思われ、公益目的を窺わせる事情は見当たらず、仮に真実性があるとしても違法性があるといえそうです。

したがって、名誉毀損も成立する余地があるように思います。

なお、この投稿が正しいものであることを前提にした発信をしている方もいるようですが、その発信についても責任追及がされる可能性があることは留意するべきと思います。

●刑事責任は?

——刑事上の問題も考えられますか

刑事上も、民事上と同じように、名誉毀損罪に当たる余地があります。

もっとも、刑事の名誉毀損は、一般的に、民事上のものに比べて強い侵害があるといえることが必要とされます。

たとえば、性的な写真が掲載されているといったことであれば、侵害の程度が大きいといえますが、本件ではそのようなものではなく、どちらかと言えばプライバシー侵害の側面が大きいといえます。

そのため、刑事上、名誉毀損罪での立件はハードルが高いのではないかと想定されます。

なお、性的な写真が掲載されているわけではないので、いわゆるリベンジポルノ法違反や性的姿態等撮影罪といった罪は成立しません。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ・ドラマ「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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