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岡口裁判官の弾劾裁判、不適切投稿受けた遺族が証言「被害者や遺族への配慮ない」「一生の心の傷」
岡口裁判官(右)

岡口裁判官の弾劾裁判、不適切投稿受けた遺族が証言「被害者や遺族への配慮ない」「一生の心の傷」

裁判当事者を傷つけるネット投稿などをしたとして訴追された仙台高裁の岡口基一裁判官(職務停止中)の弾劾裁判の第5回公判が4月19日、裁判官弾劾裁判所(裁判長:船田元議員=衆・自民=)であり、女子高生殺人事件の被害者遺族・岩瀬裕見子さんの証人尋問がおこなわれた。なお、任期満了に伴い今回から裁判長が変わった。

岡口裁判官は2017年、岩瀬さんの次女・加奈さん(当時17歳)が殺害された事件の判決文のURLを貼り付けたうえで、ツイッターに「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に無惨にも殺されてしまった17歳の女性」と投稿した。

この判決データは裁判所の基準からすると、本来公開されるものではなかった。しかし、岩瀬さんは自身が裁判に向けての情報収集に苦労した経験から、同じように困っている被害者側の役に立つならとして、問題視していないと語った。

一方で岡口裁判官のツイッターは、自身のブリーフ姿など、性的な投稿や写真も多いとし、その中で加奈さんの事件が紹介されたことについて、判決に対する興味関心の持たれ方が変わってくると不快感を示した。

「犯人の性癖の部分を抜き出し、センセーショナルな言葉を使った。被害者の尊厳や遺族への配慮がなく、娘が汚されているように感じた。とても気持ちが悪くて嫌でした」(岩瀬さん)

●「一生の心の傷」 命日の「洗脳」投稿に

岩瀬さん夫妻は岡口裁判官の投稿について、裁判所に抗議したが、その後も岡口裁判官から関連する投稿は続いた。

特に加奈さんの命日にあたる2019年11月12日には、遺族が裁判所やメディアに「洗脳」されているとの投稿がフェイスブックになされ、今年1月には東京地裁で名誉毀損が認められ、44万円の賠償が岡口裁判官に命じられている。

岩瀬さんは、「私たち家族が一番悲しい日に投稿された。岡口裁判官の執念を感じた。報復されていると思った」と回顧。今後も加奈さんの命日が来るたびに、岡口裁判官の投稿があるかもしれないと気にしなければならないとして、「私たちのされたことは『一生の心の傷』」と話した。

このほか、岩瀬さんは「岡口裁判官のツイートは、当事者が見たらどんな嫌な気持ちになるだろうか、という投稿がたくさんあった」などとして、裁判官の職責の重さを訴えた。

●訴追委に対する異議と法廷の失笑

公判中、検察官役に相当する裁判官訴追委員会の新藤義孝委員長(衆・自民)の尋問に対して、弁護側から何度も異議が出る場面もあった。

新藤委員長は、今回のケースは従来とは異なり、犯罪ではない内容での訴追という「異例の判断」であるとしたうえで岩瀬さんに質問をおこなった。

ただ、ところどころに自身の意見や見解のように思われる箇所が含まれていたことから、弁護側が複数回にわたって、意見・誘導だとして異議を出した。

それでも質問用の原稿を読み続けようとする新藤委員長の姿に、法廷からは失笑や苦笑いも漏れ、船田裁判長からも「訴追委員会は質問だけにしてください」「質問を変えてください」などの注意があった。

●元法相の裁判員から質問

一方、検察官出身で元法務大臣の山下貴司裁判員(衆・自民)からは、新藤委員長に弁護側から異議が連発されたシーンで、岡口裁判官が複数回笑顔を見せていたとの指摘もあった。

山下裁判員からどう思ったかを問われた岩瀬さんは、岡口裁判官の表情には気づいたといい、「裁判官の職責の重みを感じていないと思う」と語った。

訴追委ではこのほか、弁護士資格を持つ古川俊治委員(参・自民)と柴山昌彦委員(衆・自民)からも質問があったが、この日は弁護側からの異議はなかった。

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