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雑誌掲載の「推し写真」をSNSにアップ、注意しても…頭を抱える出版関係者 法的問題は?
画像はイメージです(kou / PIXTA)

雑誌掲載の「推し写真」をSNSにアップ、注意しても…頭を抱える出版関係者 法的問題は?

アイドルの掲載された雑誌電子版をスクショし、ツイッターやインスタグラムにアップする投稿に、出版関係者たちが頭を悩ませている。

「スクショをアップするアカウントは数多く存在し、出現しては凍結されたり消えたりして、流動的です」と言うのは、女性ファッション誌の関係者だ。

「雑誌の発売後、SNSで反応をチェックしますが、発売日翌日にスクショをアップしているアカウントを見つけた時はショックでした。しかもインタビュー記事の小さな文字まで読めてしまうほど解像度が高いのです」

特定のアイドルが掲載されている雑誌だけをアップするアカウントもあれば、手当たり次第にさまざまなアイドルの掲載雑誌をアップするアカウントもあり、タイプはさまざまだという。

「『読みたいものがあったらどうぞ』などとリクエストを募っているアカウントや、自分が思いっきり無断転載しているのに、その画像に『ダウンロードするときはご一報ください』と注意書きを添えてあったりします」(同)

●注意したら逆ギレ、出版社にすれば「載せても売れない」

放置している訳ではない。ある女性誌にかかわるフリーランスのスタッフは、転載するアカウントに注意をしたという。しかし「それなら販売期間が終わったらアップします」と挑戦的な返答が届いたり、ブロックされて無断転載を続けられたりするだけで、解決には至らなかった。

こうした状況に、先の関係者は「最終的にはファンが損をすることになりかねない」と注意を促す。

「無断転載によって雑誌を購入してくれる人が減ってしまえば、雑誌側は“そのグループの影響力は少ない”と判断します。載せても売れないからと、次の掲載機会が失われることになってしまう。雑誌側としても死活問題です。売上部数が減少を続ける中、それでもいい記事を作ろうと、なんとか続けている。なので本当に頭にきています」

心あるファンからは「無断転載をやめさせないのか」という声も届く。

「ファンの中には、仕事が終わってから読もうと、帰宅するのを楽しみにしていたりする方もいらっしゃいます。ですが、日中にSNSを眺めていたところ、無断転載画像が流れてきて、せっかく楽しみにしていたのにショックだった……という話も聞きました」

雑誌等のスクショをSNSにアップする行為は、法的にはどう考えられるか。西口竜司弁護士に聞いた。

●著作権侵害すれば最大「懲役10年」の可能性も

今回のようなケースを見聞きしますと、「本当に推し?」という思いになります。「推し」は精一杯応援する人であって、迷惑をかける人ではありませんね。では、雑誌等のスクショをSNSにアップする行為は、法的にどうなるか説明をさせて頂きます。

いわゆるスクショは、スマホなどのディスプレイ画面に表示されている内容をそのまま画像データとして取得するものであり、法的には「複製」(著作権法2条1項15号)にあたります。

複製は、個人や家庭内など限られた範囲で使用すること(私的使用)を目的とするときは、原則として自由におこなうことができます(著作権法30条1項)。もっとも、SNSにアップする目的でスクショした場合、「私的使用」の目的で複製したとはいえないため、複製権侵害になります。

また、複製した画像データをSNSにアップする行為は「公衆送信」にあたります。権利者の同意なくアップすれば、「引用」(著作権法32条)に該当するような場合ではない限り、公衆送信権侵害にもなります。

複製権も公衆送信権も著作権に含まれる権利であり、これらを侵害する行為は犯罪になり、「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金」という重い刑罰も定められています(著作権法119条1項)。民事上の責任として、差止請求や損害賠償請求などがされる可能性もあります。

著作権を簡単に侵害できるようになってしまうと出版社等の経営が立ち行かなくなります。結果、読者自身が被害を受けることになります。皆様、「推し」アイドルを守る意味でも著作権法を守って下さい。私の「推し」は……。まーそれはいいでしょう。

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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