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路上で女性に「AVで見た人だ」「パパ活で稼いでそう」 迷惑系ユーチューバー、罪に問えない?
謝罪するユーチューバーグループ(2021年8月16日、YouTubeより)

路上で女性に「AVで見た人だ」「パパ活で稼いでそう」 迷惑系ユーチューバー、罪に問えない?

道を歩いている女性に対し突然、「アダルトサイトで見た人だ」などと叫び、撮影していたユーチューバーのグループに批判が相次ぎ、謝罪する騒動に発展した。最近、こうした問題を起こすユーチューバーは「迷惑系」と呼ばれ、刑事事件に発展するケースもある。

今回、批判を浴びたのは、大阪を拠点に活動しているグループ。動画は8月2日に投稿され、大阪市内で道を歩いている女性に大声で「Pornhub(アダルトサイト)で見た人や」「絶対Pornhub出てた」などと叫び、無断で撮影していた。その際、女性たちの前に寝転がって道をふさいだほか、女性たちの顔にモザイク処理などもしていなかった。

動画はすでに削除され、グループは謝罪動画をアップしているが、ネットでの炎上が続いている。この問題が報道されると、ツイッターで 、ある女性が一昨年、自身の娘も渋谷駅前でいきなりユーチューバーに「お姉さん、パパ活でいくら稼いでる?」と言われて傷つけられたと発言。否定しても「お姉さん稼いでそう」と撮影を続けられたとツイートしている。

こうした迷惑系ユーチューバーの法的責任は問えるのだろうか。ネットの名誉毀損問題に詳しく、自身もユーチューバーとしても活躍する藤吉修崇弁護士に聞いた。

●「卑わいな言動」として自治体の条例違反になる可能性

こうした迷惑系ユーチューバーの行為は、名誉毀損罪にあたる?

「勝手にその人の名前を挙げて、AVに出ているじゃないかということを、周囲に誤解させるような撮影の方法をとっているのであれば、名誉毀損罪が成立します。

しかし、その人が本当に出ていると周囲が誤解することがない状況であれば、名誉毀損罪を問うことは難しいです。名誉毀損とは、その人の名誉が明らかに毀損された場合でないと成立しません」

では、法的責任を問うことは難しい?

「撮影場所によりますが、たとえば今回の騒動が起きた大阪府には、『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例』が設置されています。その6条2項には、『何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない』として、『人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること』を禁止しています。

今回のケースは、これに違反する可能性があると思いますが、自治体の条例は異なっていますので、ぞれぞれ検討する必要があります」

●迷惑行為を防止することはできないのか

その人の許可を得ずに勝手に撮影して動画をネットで公開する行為について、法的な問題はない?

「実は、そうした行為を直接罰する法律の規定はありません。ただし、肖像権などの何らかの人格権が侵害されたとして民事上の損害賠償請求は可能です」

今後、もしもこうしたユーチューバーの迷惑行為を防止するためには、どうしたらよいのだろうか。

「何らかの法的整備が考えられます。例えば、各自治体の条例の範囲を広げて、無許可で撮影した上で、公衆の人が見られるような形で動画をアップすることを禁止する規定をつくるなどです。

しかし、一方で規制を厳しくしすぎると、ロケなど街中での撮影が難しくなるなど、報道の自由に影響を与える可能性もあります。そのあたりのバランスがなかなか難しい問題でもあります」

プロフィール

藤吉 修崇
藤吉 修崇(ふじよし のぶたか)弁護士 弁護士法人ATB
インターネット上の誹謗中傷問題を多く扱う弁護士。弁護士になる前に、芸能関係の仕事に携わっていたことや自身も誹謗中傷を受けたことがあることから、この問題に取り組むようになった。YouTubeの登録者は10万人を超えている。 YouTubeちゃんねる「二番煎じと言われても」https://www.youtube.com/channel/UCG649yuz_0PadkYGKnJ1Tcw

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