ジャーナリストの伊藤詩織さんが、虚偽のツイートで名誉を毀損されたとして、大澤昇平さん(元東京大学大学院特任准教授)に慰謝料など110万円を求めていた訴訟で、東京地裁(藤澤裕介裁判長)は7月6日、大澤さんに対し、投稿の削除と33万円の支払いを命じる判決を下した。
ところが、判決を受けて大澤さんが「俺が大勝しました」とツイートし、物議を醸している。どうやら請求額110万円のうち、どの程度が認容されたかで勝敗を考えているようだ。
伊藤詩織裁判、4:6 でギリギリ負けるかなーと思ってたんですが、7:3 で俺が大勝しました。
— 大澤昇平〓〓 (@Ohsaworks) July 6, 2021
藤澤裕介裁判長、公平な判断ありがとうございます!
●勝訴と敗訴の判断基準は?
「勝訴」や「敗訴」は法律で定義されていないため、一般論として、原告側の主張がすべて通った全部認容などでもない限り、勝敗がはっきりしないことはありえる。
ネットでの名誉毀損問題などにくわしい藤吉修崇弁護士は、「何を勝訴とするか、敗訴とするかは事案ごとに異なってくる」と話す。
たとえば、医療ミスをめぐる裁判では、当事者が亡くなっている場合、1億円以上が請求されることもある。その訴訟で、事前の説明が不十分だったことに対する慰謝料100万円しか認められなかったとしたら、たとえ賠償命令が出たとしても、実質敗訴という評価になるだろう。
このように賠償命令が出ても原告側が敗訴と評価できることもあるし、原告の請求が棄却されても判決の内容次第では、原告にとって実質的な(一部)勝訴となることもありうる。たとえば、判決の中で原告の主張した事実が認定されているなどのケースが考えられる。
そういう意味では、勝訴・敗訴は当事者の主観もかかわってくる部分と言えそうだ。ただし、藤吉弁護士は「基本的には、原告が裁判をおこした目的がベースになる」と語る。
「今回の伊藤さんの裁判については、投稿を違法と認めてもらうことが主目的と考えられますから、伊藤さんの勝訴と考えて良いでしょう」(藤吉弁護士)