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「もう限界!」90代義母に苦しむヨメ、別居したら「保護責任者遺棄」になる?
写真はイメージです(buritora / PIXTA)

「もう限界!」90代義母に苦しむヨメ、別居したら「保護責任者遺棄」になる?

「同居している高齢の姑と、どうにかして別居したいです。なにか方法はありませんか」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられました。

相談者の女性は、夫名義の自宅に91歳になる姑と同居していますが、姑に一人暮らしをしてほしいと望んでいます。

女性は、同居のストレスが原因で精神疾患にかかり、心療内科に通っているそうで、「もう限界なんです」と訴えます。女性によると、姑は90歳を超えてますが、「身体が丈夫で自活できる状態」だといい、食事もすべて自分で料理しているそうです。

女性は姑がもし病気や怪我をした場合、医療機関の手続きなど最低限の世話はするといいます。また、姑が引っ越しを拒否したら、自分たち夫婦で別の家に引っ越すことも考えていまが、「高齢の姑を一人にすることは違法になるのでしょうか」と心配しています。

同居している高齢の親族と円満に別居する方法はあるのでしょうか。また、もしも姑の同意なく別居した場合、保護責任者遺棄などの罪になり得るのでしょうか。清水脩弁護士に聞きました。

●自活した姑に対し保護責任者遺棄罪は成立せず

同居している姑と本人の同意なく別居した場合、相談者は何らか罪に問われますか?

「同居している姑さんの同意なく別居したとしても、家族間の心情的な対立は別として、法律的に問題になることは、まず考えられません。

相談者さんが気にされている保護責任者遺棄罪(刑法218条)は、通常の遺棄罪(刑法217条)などと並んで、保護を必要とする者を保護しないことを罰するものです。

そうしますと、今回の場合は、姑さんが『保護を必要とする者』にあたるかが問題となります。法律上は、たとえば、遺棄罪の場合、保護を必要とする者の中に『老年』の者も含まれます。しかしながら、年齢のみで判断されるものではなく、他人の助力なくして自らの日常生活を営むことができないかどうかといった観点から総合的に判断されることが多いです。これは、保護責任者遺棄罪でも同様です。

今回の場合、姑さんは90歳を超えていらっしゃいますが、身体が丈夫であり、自分で料理などもでき自活できている状態とのことです。そうすると、姑さんは誰かの扶助を受けずにまさしく自活できていますから、保護を必要とする者にはあたらないでしょう。よって、姑さんと別居したとしても、遺棄罪や保護責任者遺棄罪は成立しないことになります」

●誰も幸せにならない同居は、環境を変えていく

相談者の女性に限らず、家族との同居によるトラブルをどうやって円満に解決したらよいのでしょうか。アドバイスをお願いします。

「親世代との同居は、価値観の違いなどから不和が生じることも多いです。その状態を継続していては、誰も幸せになりませんので、環境を変えていく方がよいでしょう。

今回の場合であれば、穏便に話を進めるためにも、旦那さんに協力してもらうべきです。旦那さんと一緒に夫婦で、遠すぎず、さりとて近すぎず、ほどよい距離感のあるところを選んで引っ越しをされるのが一番よいかと思います。そうすれば、姑さんが体調不良になったりした場合にも、医療機関等の手配もできますので、家族としての扶養義務も果たせます」

プロフィール

清水 脩
清水 脩(しみず おさむ)弁護士 琵琶湖大橋法律事務所
京都大学法学部・京都大学法科大学院卒 琵琶湖大橋法律事務所所属 一般民事事件から刑事事件まで幅広く取り扱うが、その中でも家事事件を多く取り扱う。

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