企業の発表会やPRイベントなどに行くともらえる「お土産」。IT企業に勤めるヨシヒコさんは、仕事の関係で出席するたびに、今日の「お土産」がなんなのか気になっている。
ヨシヒコさんがこれまでにもらったお土産は、グラスや体重計、高価なノート、メモ帳、スマホのケーブル、スマホ充電池、microSDカードなど多岐にわたるが、当然のごとく、全て自宅に持ち帰り、私物として使用している。
仕事で行ったイベントでもらった「お土産」を私物化することについて、法的にはどう考えればいいのか。吉成安友弁護士 に聞いた。
●贈与契約が誰と誰の間で成立しているのか
「法的には『契約』という観点から考える必要があります。
契約というと、契約書に印鑑を押してというようなイメージがあるかと思いますが、日常生活のなかには契約があふれています。
例えば、自動販売機に硬貨を入れて、ボタンを押して、ジュースが出てきた時に、これを飲んでよいのは、その自動販売機を設置している人と売買契約を締結したことによります。この売買契約締結により、ジュースの所有権が自分に移り、そのジュースについて、使用・収益・処分という全面的支配ができるようになっているからです」
お土産については、どう考えればいいのか。
「法的にいえば、贈与契約が締結されているということになります。 ここで問題となるのは、贈与契約が誰と誰との間で締結されているか、すなわち、取引先が、誰に贈与する意思だったかです。
すなわち、取引先が、お土産を、個人に贈与する意思だったのであれば、取引先と個人の間で贈与契約が成立していますから、お土産の所有権は個人にあることになります。当然、私物化に問題ありません。
他方で、取引先が、お土産を、会社に対して贈与する意思だったのであれば、取引先と会社との間で贈与契約が成立しています。
この場合、お土産の所有権は会社に帰属しますから、これを使用・収益・処分する権限は会社にあることになります。
ですから、会社に許可なく、私物化すれば、それは横領行為ということになります。
もちろん、会社がお土産を私物化することを認めている場合は私物化してよいわけですが、その法的根拠は、会社が贈与を受けたお土産を個人に贈与するというもう一つの贈与契約が締結されたことにより、所有権が個人に移るからということになります」