隣の車が乱暴にドアをあけたため、自分の車に傷をつけられたーー。そんな経験をしたことがある人は少なくないだろう。しかし、修理費用を加害者に請求しようとしても、一筋縄ではいかないことがあるようだ。
「隣に駐車して来た車が停止後、勢いよくドアを開け、私の車のドアに傷をつけました」という人が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せた。「相手は非を認めながら、お金がない、任意保険に入っていない」として、「謝りつつも、お金を払う気はないようです」という。
隣の車に自分の車のドアを傷つけられた場合、加害者が保険に入っていれば修理費用を払ってもらうことができるのだろうか。また、同様の場合で、加害者が保険に加入していなかったら、修理費用は請求できないのだろうか。吉山晋市弁護士に聞いた。
●相手が任意保険に入っていなかったら?
他の車によって自分の車のドアが傷つけられた場合、保険でカバーされるのだろうか。
「加害者の方が任意保険に加入しており、契約内容に『対物賠償』が含まれていれば、ドアを傷つけられた損害は保険の適用対象になります」
相談を寄せた人のように、相手が任意保険に加入していなかったらどうか。
「その場合でも、加害者に損害賠償責任を追及してドアの修理費用を請求することができます。駐車場で停車後、ドアを開ける際には隣の車に当たらないよう注意して開閉するのが当然であり、勢いよくドアを開けるなどして不注意で(過失によって)損害を生じさせたことになるからです」
ただ、「任意保険に加入していない」ことを理由にして、支払ってもらえないこともありそうだ。そのような場合、どう請求したらいいのか。 「車のドアの修理費であれば、損傷の程度にもよりますが、修理期間中の代車費用を含めても、一般的には数万円から高くても数十万円と思われます。加害者の方が任意保険に加入して おらず、かつ、修理費の支払いを拒否している場合には、少額の損害賠償請求であっても、訴訟を起こすことはできます」
●「少額訴訟」という手続き
訴訟にした場合、結論が出るまで長引くこともあるのか。
「裁判所は、訴訟の目的の価額(訴訟で原告が請求する額)によって、地方裁判所に管轄にするか、簡易裁判所の管轄にするかを分けています。訴訟で原告が請求する額が140万円を超えるときは地方裁判所に、140万円以下のときは簡易裁判所とされています。
また、原告が請求する額が60万円以下の場合には『少額訴訟』という手続きを利用することができます。少額訴訟手続きでは、原則として1回の期日(裁判がある日)で審理を終えて判決を言い渡し、紛争の早期解決を目指します。証拠書類や証人は、審理の日にその場ですぐに調べることができるものに限られます。
法廷では、裁判官と原告・被告が共に丸いテーブルに着席する形式で、審理が進められ、話し合いによる解決(和解)も可能です」