「今日、SAでお客さん置いて出発する高速バスに乗った」。そんな衝撃の体験談がツイッターに投稿された。休憩でサービスエリア(SA)に停車して、定刻になったら人数確認もせずに出発してしまったという。ツイートの投稿者は、隣の隣に座っていた女性が帰ってきていなかったため運転手に声をかけたが、無視されたという。「鬼怖い」と当時を振り返る。
このツイートに対して、「普通人数確認するよね」「時間で出ますのでって言ってるんだから時間までに戻ってこないやつが悪い」「お手洗い付きの夜行バス以外乗るまいと心にちかいました」など様々な反応があった。中には、別のバスに置き去りにされた女性が、「助けてー!」と自分のバスに乗り込んできたエピソードを紹介する人もいた。
一般的に、高速バスが休憩に入った場合、出発時刻を知らせて、出発時にはトラブル防止のために人数をカウントするケースが多いだろうが、もし出発時刻に間に合わない乗客がいた場合、バスは乗客を置き去りにして発車しても問題ないのだろうか。五十部紀英弁護士に聞いた。
●乗客がバス会社と結んでいる契約とは?
サービスエリアに置き去りにされてしまったとは、考えただけでもぞっとする話です。状況は分かりませんが、声をかけたのに運転手が無視するとは少し冷たいようにも思います。もっとも、時間通り乗車しない乗客も、急な腹痛など事情があったのかもしれませんが、他の乗客に迷惑をかけているという点では責任があるでしょう。
では、法律上はどのように解決すべきなのでしょうか。
意識したことはないかもしれませんが、高速バスに乗る乗客は、全員、バス会社との間で契約を結んでいます。多くのバス会社は、国土交通省が公表している「一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款」に準じて契約内容を規定しており、54条、55条において損害賠償責任が規定されています。
その規定では、バス会社及び係員が運送に関して注意を怠らなかったことを証明できれば、損害賠償責任を負わないと定められています。
今回の場合、運転手が出発時間を告げ、その出発時間が経過したことを確認してから出発したことを証明した場合、法律上は問題がありませんので、損害賠償責任を負いません。
もっとも、運転手が乗客に出発時間を告げなかった場合や、出発時間を間違って告げていた場合、時間より早く出発してしまった場合などは、バス会社が損害賠償責任を負い、現地までのタクシー代や宿泊するためにかかった費用などを賠償することになる可能性があります。
乗客としては、急を要する事情でバスに戻るのが遅くなりそうな場合、事前に運転手に一言かけるなどの対応が必要になりそうですね。