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三郷市小学生ひき逃げ事件、立ち去った運転手と同乗者に怒りの声 どんな法的責任を問われる?
現場付近の交差点(Googleストリートビューより)

三郷市小学生ひき逃げ事件、立ち去った運転手と同乗者に怒りの声 どんな法的責任を問われる?

5月14日、埼玉県三郷市で、夕方の住宅街を列になって下校していた小学生10人の列に川口ナンバーのSUV車が突っ込み、4年生の男児4人をはねた、という事件が報道されています。

日テレNEWSなどの報道によれば、この事故により、児童1人が右足の剝離骨折した重症の疑いがあり、残る3人も軽傷を負ったそうです。

車から降りた運転手ら2人は、負傷した子どもたちに「ごめんね」などと声をかけたものの、車へ戻り、そのまま狭い住宅街を右折・左折しながら去って行ったようです。そのため「なぜ助けずに逃げたのか」と怒りの声があがっています。

16日の夕刻には、TBSなどが同乗者の男性から、任意で話を聞いていたと報じました。詳細はまだわかりませんが、運転手らは法的にどのような責任を問われる可能性があるのでしょうか。

●(1)過失運転致傷罪(自動車運転死傷行為処罰法)

まず、この自動車は車幅の狭い生活道路で、十分注意して下校中の児童を認識すべきであり、また認識できたのに、徐行や停止を怠ったといえそうです。

そこで、「自動車の運転上必要な注意を怠った」(同法5条)といえそうです。

その結果児童が負傷したということも認められそうですから、過失運転致傷罪(7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)が成立する可能性があります。

●(2)逃げたことで問われる罪

次に、事故を起こした場合、負傷者を助ける救護義務があります。(道路交通法72条1項前段)

運転者らは、いったんは車を降りて小学生に声をかけたようですが、救護をせずに立ち去っており、同条違反になると思われます。

この場合、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となります(同法117条1項、2項)。

さらに、事故を起こした場合には警察署への事故報告義務があります(同法72条1項後段)。報告もしていないため、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金となります(同法119条1項17号)。

●同乗者の責任は?

報道によれば、2人の男が目撃されていることから、運転をしていない同乗者の責任も問題となります。

同乗者が運転者とともに逃走し、運転者の報告義務・救護義務違反を助けたといえれば、同乗者は報告義務・救護義務違反の幇助(刑法62条1項、正犯の刑を減軽)となります。

●逃げた理由によっては、さらなる罪も?

ひき逃げ事故の場合、事故を起こしたことが怖くなって逃げてしまう人がいます。

また、あくまで一般論にはなりますが、アルコールや薬物を摂取した状態で事故を起こしたり、無免許だった場合に、それが発覚することをおそれて逃げてしまう人もいます。

仮にこのような場合であれば、酒気帯び・酒酔い運転(道路交通法65条、酒気帯び運転は117条2の2で3年以下の懲役または50万円以下の罰金、酒酔い運転は117条の2で5年以下の懲役または100万円以下の罰金)や、無免許運転(道路交通法64条1項、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)となる可能性があります。

なお、薬物などを摂取し、正常な運転が困難な状態であることを認識しつつ運転を行い、人を負傷させた場合、危険運転致傷罪(自動車運転死傷処罰法2条1号)により15年以下の懲役となる可能性があります。

●複合していると重くなる

これらの違反のうち、複数が成立する場合の扱いは複雑ですが、おおざっぱにいえば「違反がたくさんあればその分重くなる」という処理がされています。

一般に、併合罪(刑法45条)の関係にある複数の犯罪が成立する場合は、重い罪の1.5倍になりますが(同法47条本文)、交通事故で結果が重大だったり、行為の悪質性が複数認められる場合には、それらを総合的に考慮して、量刑が重くなる傾向にあります。(詳しくは「裁判例にみる交通事故の刑事処分・量刑判断」(学陽書房、2022年2月)などを参照)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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