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社用車でうっかり「ドアパンチ」…賠償義務を負うのは社員、それとも会社?
ドアパンチに青ざめる人は多い(プラナ / PIXTA)

社用車でうっかり「ドアパンチ」…賠償義務を負うのは社員、それとも会社?

「社用車でドアパンチしてしまいましたが、賠償義務は誰が負うのか」。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。ドアパンチとは、駐車場などで車のドアをあけた際、隣の車に接触してしまうこと。

今回、相談を寄せた人の場合、現場は会社契約の駐車場で、相談者が乗っていたのは社用車。隣のスペースには、自家用車が止まっていました。

もし仮に相談者が傷をつけていた場合、相談者と会社、どちらが責任を負うことになりますか。中川龍也弁護士に聞きました。

●運転していた個人も連帯して損害賠償責任

ーー今回のようにドアパンチをしたのが社用車だった場合、運転していた個人か会社のどちらに賠償義務がありますか

会社が、実際に運転していた個人に代わり損害賠償責任を負うのは、法律上、使用者責任にもとづくものとなります。

この使用者責任の場合、「業務の執行について」第三者に加えた損害の賠償責任を負う旨、規定されています…ここでいう「業務の執行」は、裁判例では、正に業務の執行行為だけでなく、外形的に見て職務の範囲に属する場合も含まれるものと解釈されています。

基本的には、社用車の運転行為(乗車下車の行為を含む)は、外形的に見て職務の範囲に属するものといえますので、会社は、個人に代わり賠償責任を負います。

なお、会社だけではなく、運転していた個人も連帯して損害賠償責任を負います。

ーー事故を起こしたことで懲戒処分となる可能性はあるのでしょうか

通常、懲戒対象とする違反行為は故意によるものであり、ドアパンチといった過失による行為は懲戒対象となることはありません。

●「傷を発見したら、すぐに写真を撮影して」

ーー本件は加害者のケースですが、ドアパンチ被害者からの相談も多く寄せられます。ドアパンチ被害を受けた場合、どう対応すればよいのでしょうか

まずは、ドアパンチの傷を発見した際に、直ぐにその傷の写真を撮影し、証拠を確保しておくことが必要です。傷はそれほど目立たない場合も多いため、傷つけられたことに気づいたときには、直ちに確認をしておくことが大事です。

また、月極駐車場の場合ではなく、時間貸駐車場のような場合は、ドアパンチを行った相手方を特定しなければ、民事上の責任を追及することも困難になります。

隣に停車している車両のドア付近に傷がついていないかどうか、ついている場合には、その場所とご自身の車両の傷の高さが整合しているかどうかを確認し、写真等の証拠を確保しておくことも必要です。

保険に加入しておられる場合には、保険会社のアジャスター(損害調査業務を担当されている方)に調査を依頼し、傷の整合性を確認してもらう(写真等の証拠も確保してもらう)ことも重要です。

私の経験上、アジャスターの調査結果を裁判所へ証拠として提出し、ドアパンチの事実が認められたという事案もあります。

ドアパンチの事案を見ますと、横にあまりスペースがないにもかかわらず、強引に乗り込もうとして相手車両を傷つけるケースが多いものと思われます。

ドアを大きく開けなければならない事情があるならば、車を駐車スペースから出した後にドアを開けて、人の乗り降りや荷物の出し入れをするなど、車を停めている者同士、気遣いをし合うことが重要ではないかと考えています。

プロフィール

中川 龍也
中川 龍也(なかがわ たつや)弁護士 中川龍也法律事務所
立命館大学卒。平成22年弁護士登録(京都弁護士会所属)平成28年11月に中川龍也法律事務所を設立。主な取り扱い分野は交通事故(主に被害者側)事件。

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