「警察に連絡せずに示談したい」と言われたが、応じてよいのだろうかーー。そんな相談が、弁護士ドットコムに寄せられた。
相談者によれば、車を運転中、自転車と接触する交通事故を起こし、警察に連絡することを提案したところ、「会社にバレるとまずい」と相手に拒否されてしまったという。相手はスマホで通話しながら片手で運転していたようだ。
相手はその場での示談を希望したが、相談者は示談するとしても警察などに報告した上ですべきと考え、ひとまず事故状況の撮影や連絡先の交換などにとどめ、その日は別れたという。
後日連絡したところ、相手はあらためて「どうしても当事者同士だけで示談したい」と要望してきたという。しかし、相談者は、保険会社や警察に報告した上で示談すべき、と考えているようだ。
このようなケースで、相談者は相手の要望に応じてよいのだろうか。五十嵐亮弁護士に聞いた。
●警察に通報→示談書を
「たとえ事故の相手方が当事者間だけでの示談を希望していても、自分の判断で解決しようとせず、警察や保険会社にきちんと連絡することが必要です。『あとでよく見たら違うところにも傷があった』とか、『帰宅したら首が痛くなった』として請求されることはよくある話です。
そのようなことでトラブルにならないように示談書が必要となります。相談者の方も、最初に手続きを踏んで示談書を作成すれば、今のようなトラブルには発展しなかったはずです」
では本来、どのように対応すれば良いのか。
「事故を起こしてすぐにやるべきなのは、(1)警察に通報 (2)交通事故証明書の発行 (3)車両の傷の写真撮影、の3点です。
最初にするべきこととして、(1)警察への通報はすぐにわかることと思います。警察官を呼ぶことで、交通事故の日時、場所、当事者名等を証明する(2)の交通事故証明書を作成してもらうことができます。
保険会社から保険金を支払ってもらったり、保険会社の示談代行サービスを利用したりする場合には、交通事故証明書が必要となりますが、警察に交通事故があったことを通報しないと発行されません。
次に、修理代金についても適正な金額か否かを確認するために、(3)車両の傷の写真を撮影してください」
●「清算条項」は必須
その後の手続きは、どう進めることになるのか。
「写真と見積もりを照らし合わせ、事故と関係ない箇所の修理代金まで含まれていないかどうか確認し、支払うべき修理代金を確認します。
そして、最終的に確認された損害額(修理代金)および清算条項(『示談書に定めるほか互いに何も請求しない』ことを確認する条項)などを盛り込んだ示談書を2通作成し、それぞれ互いに署名・押印し、1通ずつ持ち合います。
清算条項を定めることで、示談成立後に追加請求をすることができなくなりますので、無用のトラブルを防ぐことができます」