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「未来の受験生に女の子だから諦めなさいと言いたくない」東京医大不正入試訴訟で原告女性
東京医科大学(2018年、弁護士ドットコム撮影)

「未来の受験生に女の子だから諦めなさいと言いたくない」東京医大不正入試訴訟で原告女性

東京医科大の不正入試問題で、性別を理由に不利な取り扱いをされたとして、不合格だった元受験生の女性36人が受験料の返還や慰謝料を求めている裁判の第2回口頭弁論が7月26日、東京地裁で開かれた(谷口安志裁判長)。東京医大側は争う姿勢を示している。

この日は、原告の一人である女性が、意見陳述を行なった。女性は2017年、2018年と2回にわたり東京医大を受験したが、いずれも不合格だった。それでも医師になる夢を諦めずに受験勉強を続ける中、入試で不正が行われ、自分が合格していたことを知らされたという。

「人生で感じたことのない怒り、憎しみばかりが沸いてきました」という女性。「未来の受験生に対し、『あなたは女の子だから、あなたは歳をとっているから、夢を諦めなさい』と言うような大人に自分は絶対なりたくない」と強く訴えた。

●一度も自分より高い点を取ったことのない友人男性が…

「もしかしたら自分は、本当は春に東京医大に合格していたのかもしれない、だとすれば今私が必死に勉強している意味は何なのだろうか、時間の無駄だろうか、頑張っても自分が『女子』として受験するというそれだけの理由で報われないのだろうか、といったことが頭に渦巻きました」

女性は昨年夏、東京医大の不正入試を知った時のことを意見陳述で振り返った。外科医が不足していることを知り、「少しでも助けになりたい」と思い、東京医大を第一志望校として受験していた。

違和感をおぼえたのは、2018年3月のこと。通っていた医学部受験専門の予備校の友人男性が、東京医大に繰り上げ合格をしたと知った時だった。女性はそれまで、模試でその友人男性より、一度も低い点を取ったことがなかった。

意外に思ったが、「受験とはそういうものだ」と自分を納得させ、再び受験勉強に励んだ。その後、東京医大で不正入試があったことをニュースで知り、女子というだけで差別されていたことが頭に渦巻いた。東京医大からは追加の合格通知が届いたが、「嬉しいどころか、人生で感じたことのない怒り、憎しみばかりが沸いてきました」という。女性は今年2月に別の大学に合格、現在はそこで学んでいる。

●大学内にも女性差別の入試を肯定する声

別の大学に入った女性に聞こえてきたのは、東京医大不正入試を肯定するような声だった。

「大学内では、差別を正当化する人も多くいました。病院の元職員の方からは、『女性が増えると病院側も大変なんだよ?女性用の更衣室とか新しく作んなきゃいけないんだし』と言われました。『医学部は職業訓練学校なんだから、学校がどんな生徒を選ぼうと学校の自由』、『差別あるのわかってて受験したのに、何を今さら?』という声も耳にしました」

女性はこうした声に対し、「性別が何であろうと、歳がいくつであろうと、受験では決して差を付けられるべきではないはずです」と反論。「未来の受験生に対し、『あなたは女の子だから、あなたは歳をとっているから、夢を諦めなさい』と言うような大人に自分は絶対なりたくないし、それを黙認する医療界であってほしくありません。こんなに悲しく辛い思いをするのは、私たちの代で最後にしたいです。その思いから、声を上げることを決意し、この訴訟に参加しました」と訴えた。

●東京医大側は「入試に違法性ない」と争う姿勢

この裁判で原告側は、入試は得点状況に応じて公平に評価されるものと信じていたのに、不公平な入試を受けさせられたことへの慰謝料として、1年度あたり200万円の慰謝料を要求。さらに原告が納付した受験料や、受験に際し支出した交通費や宿泊費に相当する額を支払うよう求めている。

一方、被告側は入試に違法性はなかったとして、全面的に争う姿勢を示している。また、得点調整によって不利益を被った受験生や不利益を被った可能性のある受験生に対しては、追加合否判定の実施や保障の提案を実施してきた上、得点調整がなかったとしても合否に影響がなかった受験生については損害は認められないとしている。

次回口頭弁論は10月25日に開かれる予定。

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