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日台同性カップル「在留特別許可」求め尋問「私たちは強い絆で結ばれている」
Gさん(左)とXさん(2018年3月撮影)

日台同性カップル「在留特別許可」求め尋問「私たちは強い絆で結ばれている」

不法滞在(オーバーステイ)により「退去強制処分」となった台湾男性Gさん(40代)。日本人の同性パートナーXさん(50代)と25年同居する「同性婚」状態を根拠に、処分の取り消しを求め、東京地裁で国と争っている。

12月21日、2人の尋問があり、「(相手は)生きていく上でなくてはならないパートナー」「1日でも長く同じ時間を共有したい」などと発言した。

不法滞在でも、日本人と法律婚・事実婚の関係にあれば「在留特別許可」が認められうる。しかし、日本には同性婚の制度がない。Gさんは、同性愛者にも在留特別許可を出すべきだと主張している。

●結婚は「愛し合っている人と一緒にいること」

2人が出会ったのは1993年11月。ほどなく、GさんがXさんの家に移り、同居生活が始まった。

GさんがHIV陽性となったときは、不法滞在で健康保険がきかないため、主にXさんが経済面、心身面でGさんを支えた。逆にXさんが抑うつ状態になったときは、Gさんが奮闘。互いに補い合って、25年間ともに暮らしてきた。

尋問では、自身の代理人弁護士から「結婚とはなにか」を問われるシーンもあった。Gさんの答えは、「愛し合っている人、生涯支え合う人と一緒にいること」だ。

現行法では、結婚(同性婚)できないものの、「私たちは強い絆で結ばれていると強く信じています」。

傍聴席は、2人の支援者でほぼ満席。Gさんの受け答えに、すすり泣く声も聞こえた。

●「めぐり逢えた幸せを手放したくない」

Gさんは1992年に「留学ビザ」で初来日。その後、一旦帰国し、「観光ビザ」で2回、合計3回日本に来ている。Xさんと出会ったのは、来日2回目のとき。3回目の来日後、Xさんとの同居を始め、ビザの期限が切れた。1994年4月のことだ。

不法滞在せず、一度台湾に戻ればよかったのではないか――。この指摘に対し、Gさんは3度目の来日でビザを申請する際、短期間で日台を行き来していることから、ビザを偽って、日本に働きに行くと疑われたと主張する。

台湾に帰ったら、もう日本には行けなくなるかもしれない。「めぐり逢えた幸せを手放したくない」ーー。悩んだ末に、不法滞在でXさんと暮らす道を選んだそうだ。

2人が異性カップルであれば、ビザが切れる前に結婚し、日本で暮らすという選択肢もあったかもしれない。しかし、日本には同性婚の仕組みがない。

もともと2人は、弁護士と相談のうえ、入管に出頭して在留特別許可を求めるつもりだったという。審査の間は働けなくなるということで、準備をしている途中の2016年6月、職務質問から不法滞在がわかり逮捕された。

●台湾にも差別、偏見はある

処分が取り消されない場合、Gさんは日本にいられなくなる。しかし、一部連絡の取れる親類はいるものの、もはや台湾に生活基盤はない。

そもそも家族との関係は良好とは言い難く、かつて「同性愛を治せ」などと言われ、疎遠になった経緯がある。

一方、国側の代理人は、台湾で2019年に同性婚が法制化されることも踏まえ、Gさんの来日以来25年で、家族の心境にも変化が起きているのではないかと問いかけた。

Gさんは、「(同性婚の法律が)来年できるかもしれないが、同性愛に対する差別、偏見、理解が足りていないところはまだある」と回答。

事実、台湾では今年11月、同性婚の法制化をめぐる国民投票で、民法の改正による方法が否決されたばかりだ(=特別法で定める)。

Gさんは「強制退去の処分を消していただければと思います」と求めた。

次回期日は3月1日。いよいよ、判決が近づいてきた。

(弁護士ドットコムニュース)

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