大阪地検トップの検事正だった北川健太郎氏が、部下の女性検事に対する準強制性交罪で起訴された事件をめぐり、新たな問題が浮上した。
被害を訴えた女性の入退庁記録や業務メールなどを、大阪地検が本人に無断で証拠化し、被告人である北川氏側に開示していたとして、女性側が検察庁に抗議文を提出していたことがわかった。
女性側は「検察職員に人権はないのでしょうか」とうったえ、開示の法的根拠について説明を求めている。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「無断で勤務記録や業務メールを被告人側に開示した」と主張
抗議文は8月28日付で、最高検察庁の検事総長や、大阪高等検察庁の検事長、大阪地方検察庁の検事正などに宛てられている。
文書によると、大阪地検は、被害を訴えた女性の入退庁記録や出勤日、残業時間などの勤務状況に関する情報のほか、女性が職場パソコンでやり取りした業務上のメールなどを女性への説明がないまま刑事裁判の証拠として証拠化し、被告人である北川氏側に開示していたという。
ここ数年で明らかになった検察庁の不祥事や問題(取材や新聞報道をもとに弁護士ドットコムニュースが作成)
●「検察庁は職員と犯罪被害者としての人権を侵害している」
こうした事実は、北川氏の刑事事件をめぐる証拠開示の手続きの中で明らかになったという。
女性側は抗議文で「検察職員に人権はないのでしょうか」と問いかけ、次のようにうったえている。
「犯罪被害者が一般人の場合、その被害者が勤務する職場が管理する情報を、検察庁が令状に基づかず、本人の同意も得ずに差し押さえることはできないはずです。 検察庁は、私が検察職員の立場にあるという理由だけで、恣意的に公私混同して権力を濫用し、検察職員としての私の人権と、犯罪被害者としての私の人権を著しく侵害し続けている」
●事件に関する「要望メール」も開示されたと主張
抗議文によると、北川氏側に開示された女性の業務メールには、女性が事件について検察庁に要望などを伝えた際のメールや、同僚職員との間でやり取りしたメールも含まれていたという。
さらに、女性が秘匿を求めていた生年月日などの情報についても、大阪地検がマスキング処理をしないまま北川氏側に開示したとうったえている。
「従前より、検察庁と私との信頼関係は、検察庁による人権侵害によって著しく損なわれてきたところ、本件開示行為の発覚により完全に破綻しました」
抗議文では最後に、女性の業務メールなどを被告人側に開示した法的根拠や、開示を判断した経緯などについて、検察庁側に説明と検証を求めている。
女性が大阪地検などに提出したという抗議文の一部
●大阪地検に取材申し込むも「事前登録が必要」
抗議文に記載された内容は事実なのか。事実であれば、どのような法的根拠に基づいて開示したのか。また、手続きの適法性についてどのように考えているのか。
弁護士ドットコムニュースが大阪地検に電話とメールで取材を申し込んだところ、記者クラブに所属していない場合は「記者会見等に参加するための事前の登録」が必要だと説明を受けた。
事前登録には、自宅住所などを記入した申請書のほか、社員証の写しや顔写真を提出する必要があるという。弁護士ドットコムニュースは必要書類を郵送した。
9月8日、大阪地検から連絡があり、次席検事のコメントとして以下の回答があった。
「文書を受け取ったことは事実であるが、期日間整理手続中の事件に関するものであるため回答は差し控えさせていただきます」
【編集部注】大阪地検から回答があったので、追記しました(更新:2026年9月8日19時40分)