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広陵高野球部暴力問題、男子生徒2名が家裁送致 実は「処分がされない」可能性ある?
画像はイメージです(ペイレスイメージズ 2 / PIXTA)

広陵高野球部暴力問題、男子生徒2名が家裁送致 実は「処分がされない」可能性ある?

広陵高校野球部の暴行問題をめぐり、広島地方検察庁が12月9日、寮で下級生に暴力を振るったとして、同校3年の男子生徒2人(18)を暴行容疑で広島家庭裁判所に送致したと報じられました。

広陵高校をめぐっては、今年の夏の甲子園出場が決まったあと、部員による暴力事案がSNSで拡散。甲子園に出場していた広陵高校は、2回戦前に途中辞退するという異例の事態となっていました。その後捜査が進められ、加害者とされる生徒2名が暴行の容疑で書類送検されていました。

「家裁送致」という言葉からは、少年院送致などの重い処分を思い浮かべるかもしれません。しかし、必ずしも厳しい処分に直結するわけではありません。今後の処分の見通しについて、データをもとに解説します。

●家裁送致とはどのような手続きか

一般論として、少年事件でも逮捕される場合には、逮捕・勾留までは成人の刑事事件と同じように進みます。その後、少年の更生のためにどうすべきか判断するため、事件が家庭裁判所に「送致」されます。

「送致」というのは、簡単にいえば事件の資料などを家庭裁判所に送り、後は家庭裁判所で事件を処理してください、という手続きです。

家庭裁判所では、事件の背景を詳しく調べ、その結果を踏まえて「少年審判」が行われ、保護観察や少年院送致などの処分が決められます。

ただし、事件の重大性などから、大人と同じように刑事裁判を受けるケースもあります(これを「逆送」といいます)。

本件では、これまでに身柄拘束はされていないようです。そこで、家庭裁判所に送致されたといっても、少年らは在宅のままで家庭裁判所での調査が行われると思われます。

調査の結果、少年審判が開かれることになるかもしれませんし、審判自体が開かれずに手続きが終了する可能性もあります。

画像タイトル 少年事件の手続きの基本的な流れ(弁護士ドットコムニュース編集部作成)

●家裁送致後の実質6割は処分されない

では、家庭裁判所に送られた後、実際には、最終的にどのような結論となることが多いのでしょうか。

家庭裁判所での判断をものすごく大きく分けると、

1)まず、少年審判を開くか、開かないかが決められる  少年審判が開かれなければ、そこで手続きは終わります。

2)少年審判が開かれた場合には、主に以下のような結論がありえます。
・不処分‥審判は開いたが特に何もせずに手続が終わる
・保護観察‥しばらくの間保護観察所の指導を受けながら生活する
・少年院送致
・通常の刑事手続に移行(逆送)

このように、少年審判が開かれないこともありますし、開かれた場合でも、処分されない場合(不処分)もあります。

裁判所が公表している『裁判所データブック2025』によれば、家裁が扱った5万5722件の事件中、「審判不開始」と「不処分」の合計は2万9816件でした。これは全体の約53.5%にあたります。

なお、このデータで終局事由としてあげられている項目の中には、移送・回付(5344件)や従たる事件(※他の事件にまとめられたもの。4565件)が含まれます。

これらは事件そのものの処分について終局的に判断したというわけではないため、これを除くとすれば、裁判所が実質的に処分の要否を判断した事件は4万5813件となり、審判不開始や不処分の割合は約65.1%に達します。

つまり、実質的な判断が行われた事件のうち、約3件に2件は、保護処分を受けずに終了していることになります。

また、この統計では、観護措置がとられている(=少年が身柄拘束を受けている)事件と、在宅の事件とでデータが分けられていません。

一般に在宅の事件の方が処分が軽い傾向がありますから、本件のような在宅での暴行事件においては、審判不開始や不処分となる可能性がより高いと考えられます。

●「審判不開始」「不処分」とは

審判不開始とは:

調査の結果、非行事実が認められない場合や、少年が自ら立ち直ることができたり、家庭裁判所の調査の過程で立ち直る見通しが立つ場合もあります。

このような場合、審判不開始決定により事件は終わり、少年は手続きから解放されます。

不処分とは:

審判の結果、非行事実が認められない場合や、少年に保護処分を下す必要がないと判断されたときには、不処分となります。

●「特定少年」と処分の見通し

本件で送致された生徒は現在18歳であり、改正少年法における「特定少年」にあたります。

特定少年は、実名報道が可能になったり、検察官送致(逆送)の範囲が拡大されたりと、大人に近い扱いを受けます。

しかし、本件で送致された生徒らは犯行時(2025年1月)には2年生であり、17歳だった可能性があります。実名報道などの扱いの違いについては「行為時」の年齢で判断されることに注意が必要です。

●処分を左右する「犯情」と「要保護性」の判断

今後の処分を決めるにあたって、「犯情」と「要保護性」の判断が重要になります。

犯情(はんじょう)とは、簡単にいえば今回の犯罪がどの程度悪質なものだったか、ということです。被害結果の重さなどもこの事情に含まれます。

要保護性(ようほごせい)とは、再犯のリスクや、更生のために保護処分が必要かどうかということです。

両者の関係性などは色々と議論のあるところですし、犯情については特定少年についての規定(少年法64条1項)があるのですが、難しくなりすぎるので割愛します。おおざっぱに両方が問題となる、と考えて良いでしょう。

●本件ではどう判断されるか

犯情については、「いじめ」の具体的な内容が調査により明らかになるでしょうし、被害の程度としても、たとえばそのために転校を余儀なくされるほどのものであった等の認定がされた場合には、悪質性が高いとして処分を重くする方向に働く可能性があります。

他方で、要保護性について、本件では、たとえば以下のように、保護処分を軽くしたり、審判不開始や不処分となる方向に働く事情がいくつか挙げられます。

まず、社会的制裁を受けている点です。報道による周知や学校からの処分により、本人たちが事の重大さを自覚し、制裁を受けたと評価されれば、処分の必要性が下がったといえます。

次に、環境の変化です。高校3年生の12月という時期を考えると、まもなく卒業を迎え、事件が起きた寮や部活動という環境から離れることが確定しています。自然と環境調整が行われることが期待できるため、あえて保護処分を行う必要性が低いと判断されやすくなる可能性があります。

また、事件後の経過も含まれうると思います。事件から約1年が経過する間、在宅のままその他の非行がなく過ごしているということであれば、再犯リスクが低いと判断される可能性があります。

なお、当然ですが、少年事件とは別に、被害少年への損害賠償などは民事上の問題として別途問題となりえます。

(参考文献)※文中で挙げたものの他
「少年事件マニュアル - 少年に寄り添うために」(2022年7月、日本評論社/福岡県弁護士会子どもの権利委員会)
「少年事件重要判決50選」(2010年10月、立花書房/廣瀬健二)
「ビギナーズ少年法 第3版補訂第2版」(2023年5月1日、成文堂/守山正、後藤弘子)

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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