スマホのキャッシュレス決済サービス「PayPay」を使って、友人に送金しようとしたら、誤って、まったくの他人に送ってしまった――。そんな情報が弁護士ドットコムニュースに提供された。
情報提供者によると、送金の際に誤った電話番号を入力してしまったという。運営に問い合わせても、当事者同士での解決を求められたそうだ。はたして、お金は返してもらえるのか。
●チャット機能などで呼びかけているが反応がまったくない
情報提供者によると、誤って送金した電話番号に電話をかけたり、SMSを送ったり、アプリのチャット機能で返金を求めているが、反応はない。送金した額は低くないという。
「PayPayに問い合わせると、このような誤送金のケースは当事者同士で解決するように、ということでした」
PayPayは公式サイトを通じて「受け取りが完了している場合はキャンセルできません。受け取り済みの取り引きのキャンセルは、受け取り側と直接連絡をとり、残高を送り返していただく方法をご検討ください」と呼びかけている。
情報提供者は、相手のPayPayのアカウントが休眠状態だったり、電話番号が別の人に渡っている可能性もないかと不安になっているようだ。
今回のようなケースでは、「不当利得」にあたるとして、誤送金した相手に法的な返還請求手続きができるのだろうか。池田誠弁護士に聞いた。
●「不当利得」の返還請求権が発生し、返還を求めることができる
——PayPayで誤送金した場合、送金先の相手に返還を求めることはできるのでしょうか。
誤送金をしてしまった場合、不当利得返還請求権が発生し、返還を求めることができます。
不当利得返還請求権は、法律上の原因なく相手が利益を得た場合に、その利益の返還を求めることができるという権利ですから、誤送金はその典型例です。
今回のケースのように、誤送金を把握されたら、まずは、できるだけ速やかにメッセージや電話で返金を請求するべきだといえます。
ただ、相手としても、見ず知らずの人から突然の送金を受けて困惑していることが想定されますし、返金したあとにもトラブルに巻き込まれる不安を抱えていると思うので、相手が返金しやすい環境を整えて返金を要請するのが重要かと思います。
もっとも、相手の属性もわかりませんから、不用意にこちらの氏名や住所等の個人情報を明かすことは控えたほうがよいです。
一方、送金先の電話番号の名義人に対し、不当利得返還請求訴訟を提起したり、弁護士を通じて請求通知を送ったりすることもできます。ただし、費用がかかる話ですから、慎重に判断したほうがよいです。
なお、携帯電話番号の名義人が第三者に電話を勝手に貸与しているとしても、携帯電話番号の名義は、いわゆる携帯電話不正利用防止法により、原則として、当事者間で勝手に変えることができません。したがって、基本的には、契約上の名義人に対して返還請求するので足りると考えます。