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ネットで買い物→在庫切れ→「◯◯ペイで返金します!」は詐欺を疑うべし? 最悪の場合は「口座凍結」被害まで
画像はイメージです(Ushico / PIXTA)

ネットで買い物→在庫切れ→「◯◯ペイで返金します!」は詐欺を疑うべし? 最悪の場合は「口座凍結」被害まで

ネットで検索して見つけた通販サイトで買い物したところ、「在庫切れ」なので◯◯ペイ(Pay)で返金すると連絡が来た。相手の指示に従ってスマホを操作しているうちに、さらにお金をだましとられてしまったーー。

こんな詐欺が横行しているようだ。国民生活センターによると、「◯◯ペイで返金します」と言われた詐欺に関する相談件数は急増している。同センターは「『◯◯ペイで返金します』と言われたら詐欺を疑って!」と呼びかける。

こうした詐欺は「◯◯ペイ返金詐欺」と呼ばれている。西山晴基弁護士は「被害者の『返金してほしい』という気持ちが利用されて、被害が拡大していく」と指摘する。この詐欺の恐ろしさについて、西山弁護士に聞いた。

●ネットショッピング自体が詐欺被害の始まり

「◯◯ペイ返金詐欺」の多くは、偽のショッピングサイトの詐欺被害から始まります。私のもとにも複数の相談事例が寄せられています。総合すると、おおむね次のような内容でした。

「欲しいと思っていたけれど、なかなか出回っておらず、手に入らない商品をネットで見つけました。その商品が売り出されていたサイトは、これまでにあまり見たことがないショッピングサイトでした。

とはいえ、ほかでは手に入らない商品だったので、欲しいなと思い、このサイトから商品を注文して代金を支払いました。

しかし、その後、注文先からは、『大変申し訳ありません。注文いただいた商品は、すでに在庫切れとなっていました。そのため、『代金を返金させていただきます』というお詫びの連絡がきました」(被害者の声)

実際には、支払った代金が戻ることはなく、ネットショッピング自体が詐欺被害の始まりだったのです。

●被害者の預金残高まで把握して、すべてだまし取ろうとしてくる

詐欺グループは、すでに詐欺の被害に遭った人を狙って、被害者の「返金してほしい」という気持ちを利用して、さらにお金をだまし取ろうとします。

「注文先からは、返金手続の連絡を取るためとして、LINEアカウントに誘導されました。LINEで連絡を取り始めると、◯◯ペイを使って返金すると言われました。

次に、返金に必要な操作を教えるということで、LINEのビデオ通話をさせられました。ビデオ通話では、私のスマートフォンの画面を画面共有しながら、◯◯ペイの操作方法を説明されました。

私は、代金を返金してもらえると思い、説明に従って操作をしていたのですが、実際には、返金されるのではなく、なぜか私がさらにお金の支払いをさせられていたんです」(被害者の声)

このように、詐欺グループは「〇〇ペイで返金する」「返金のための操作をビデオ通話で説明する」とウソを言って、被害者に返金のための操作だと思い込ませます。

そして、操作方法に慣れていない被害者は、説明通りの操作をさせられた結果、銀行口座とアカウントを紐づける操作やオートチャージの設定をしたうえで、送金手続きまでさせられてしまうのです。

しかも、詐欺グループは、ビデオ通話で操作方法を説明している間に、被害者の銀行口座内の残高がわかる画面も画面共有させることで、被害者の預金残高を把握して、すべてだまし取ろうとしてくるのです。

●金銭被害だけにとどまらない、さらなる恐ろしい被害も

現在、こうした詐欺被害に加え、さらに被害者の預金口座が口座凍結されてしまうというケースも増えています。

口座凍結というのは、本来、詐欺の被害者を救済するための手段の一つです。しかし、詐欺グループの巧みな手口によって、被害者の口座まで凍結される事態が起きてしまっているのです。

「犯人と連絡している際に、突然、私の預金口座に1円が数回振り込まれてくることがありました。何かと思い、犯人に聞いたら、犯人は『こうやって返金できるから、安心して』と言ってきたのです」(被害者の声)

詐欺グループは、被害者を信じ込ませるため、突然、被害者の口座に数円だけお金を振り込むという手口も使い、被害者からさらにお金をだまし取ろうとします。

そして、被害者を信用させるために振り込んだお金は、別の詐欺被害に遭われた方のお金の一部であることがほとんどです。

そのため、捜査機関により、別の詐欺被害のお金が振り込まれた口座として口座凍結要請されて、被害者の口座まで口座凍結される事態が起きているのです。

しかも、口座凍結された状態を放置しておくと、その口座の預金を消滅させる手続きが進められたり、他の預金口座まで凍結されたりするリスクも生じます。

そのため、このような事態に巻き込まれてしまった場合には、いち早く弁護士に相談して、さらに被害が拡大しないよう、適切な対応を取ることが必要になってきます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

西山 晴基
西山 晴基(にしやま はるき)弁護士 レイ法律事務所
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。

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