静岡県で一家4人が殺害された事件の再審(やり直しの裁判)で無罪を言い渡された袴田巌さん(88)。その弁護団と支援者が10月4日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いて、検察側に向けて控訴を早期に断念するよう訴えた。
当時、袴田さん有罪の決め手となったのは、事件発生から1年2カ月経って、現場近くのみそタンクから見つかった「血の付いた5点の衣類」だ。今回の再審で、静岡地裁は「捜査機関が捏造したもの」と結論付けたが、衣類に残った「血痕の赤み」が争点となっていた。
この日の会見で弁護団側は、光の性質を研究する「光学」の専門家に鑑定を依頼したところ、「5点の衣類」のうち、ステテコの血痕や生地の色相や彩度から「短期間みそに漬けられただけ」、つまり、1年以上も浸かったものではないという結論を得たと明らかにした。
主任弁護人の小川秀世弁護士は「(5点の衣類の血痕に赤みがあるかどうかという)主観的な議論に決着をつける画期的な鑑定だ」と述べた。袴田さんを支援している白井孝明さんは「これに関して(検察側が)争うのは、時間の無駄、あってはならないことだ」と話した。
再審公判に新たに証拠として提出しなかった理由は「すでに再審請求審で合理的な疑いが生じたと判断されていたので、迅速な結論を得るためだった」という。弁護団では、オンライン署名サイト「change.org」でも検察の控訴を断念するよう求めるキャンペーンを展開している。