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Booking.com巨額不払い、3600万円超求め集団提訴 「倒産危機の宿も」「信頼してたのに…」
Booking,comのサイト(同社HPより)

Booking.com巨額不払い、3600万円超求め集団提訴 「倒産危機の宿も」「信頼してたのに…」

世界最大級の宿泊予約サイト「Booking.com(ブッキングドットコム)」による宿泊施設への預かり金が未払いとなっている問題で、同社と契約する11社が10月20日、計約3669万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。最大の被害額は約1600万円。

東京都内で記者会見した原告代理人の加藤博太郎弁護士は「既に計50人超から相談が寄せられており、被害総額は億単位になる可能性もある。前代未聞の巨額の不払い事件です」と訴えた。

都内で施設を経営する原告・松野久美子さんも出席し、「コロナが明けてインバウンドがこれからという矢先。信頼しきっていました。早期解決を求めたいです」と話した。

●会社側の規約には「オランダの法律に準拠」と記載

加藤弁護士によると、原告のなかには社会保険料や年金、従業員への給与などが支払えなくなっている事業者が複数いるといい、「不動産を売ったりして資金繰りに苦しんでいる。破産の危機のところもある」と説明する。不払いは2023年夏ごろから発覚。海外の他の国でも同様の事態が報じられているという。

HPによると、Booking.comは1996年、オランダ・アムステルダムで設立。民泊から高級ホテルまで多様な宿泊施設を予約できる旅行ECサイトとして知られる。43言語に対応し、660万軒以上の宿泊施設が登録されているという。

Booking.com側は事前の交渉で「システムの不具合」「海外送金のミス」などと説明してきたが、抜本的な解決にならず提訴に至った。ただ、施設との利用規約には「オランダの法律のみに準拠し、紛争はオランダ・アムステルダムの管轄裁判所に専属的に服する」と書かれており、日本での裁判で解決が可能かは分からない状態。加藤弁護士は「観光庁にも相談している。この問題を理解していただき、同社には速やかな支払いを求めたい」とした。

複数の海外メディアが、他国でも未払いが問題視されていることを報じている。イギリスの大手メディア「ガーディアン(The Guardian)」の報道(9月30日)によると、オランダのBooking.com社本社広報部は、未払いの原因を「技術的な問題」とし、緊急で作業を続けていると回答したという。影響を受けたホテル・プロバイダの数や補償の有無などについては回答を得られなかったとしている。

カナダのBNNニュース(10月12日:アジア版)では、多くのホテル経営者が担当者と連絡を取ることができなかったこと、日本で訴訟が提起される予定であることにも触れられている。

会見する(左から)松野さん、加藤弁護士(2023年10月20日、弁護士ドットコム撮影)

●「不動産売ってやりくり、倒産危機も」

松野さんは、Booking.comと契約して5年ほど。近年は特に圧倒的な集客力で、予約の7〜8割を頼っていたという。しかし、今年7月ごろから支払いが滞り始めた。現在は金融機関の借入金で対処しており、約430万円を請求している。

「世界最大級のプラットフォームで、こんなことが起きると思っていませんでした。日本の1事業者が言ってもどうしようもないかもしれない。みんなで声をあげていきたい」

また、岐阜県で旅館を営む松尾政彦さんもオンラインで参加。約440万円を請求しており、内容証明を送って担当者と面会もしたが、内容を一切理解していない様子だったという。「危機管理能力のない会社を相手にしなければならない状態」と不信感をあらわにした。

宿泊費用が入ってこないにもかかわらず、食材費や社会保険など出金がかさむ状態で、不動産を売却して資金繰りをしていると説明。「海外送金のミスだと説明していたが、名義がカタカナやひらがなで国内送金なのではと考えている。実際は資金繰りの問題かもしれない」と話した。

松野さんも「振り込みました、振り込まれてませんという繰り返しのやりとりで、もう戦う術がない。施設からの手数料は送金できているし、日本のシステムでは?と思ったことがあった」と明かす。

加藤弁護士は「Booking.com社に頼らざるを得ない小規模事業者を狙っている疑いもある。インバウンド需要が高まるなか、日本の観光業界に水を指す事態となっている」と強調した。

Booking.com社広報は弁護士ドットコムニュースの取材に対し「原因はオランダ本社での7月のシステムメンテナンスです。複数の他の国でも送金がうまくいかないトラブルが発生しましたが、徐々に解消しています。日本でも円滑に速く送金できるよう手続きを進めているところです」と説明した。

日本法人では口座を持っていないため、国内での代替・救済措置を取ることができないとしている。また、日本法人の代表は営業部門の統括にすぎず、会見やプレスリリースをする予定はないといい、オランダ本社からの説明は予定されていないとしている。

(編集部:2023年10月20日午後3時45分、広報からの回答を追記しました)

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