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ジャニーズ事務所は「曖昧にしたまま逃げ切れるわけがない」、今後のシナリオは?
二本樹顕理さん(左)と松谷創一郎さん(https://www.youtube.com/watch?v=tTsiusuqHd8)

ジャニーズ事務所は「曖昧にしたまま逃げ切れるわけがない」、今後のシナリオは?

ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川氏(享年87)による性加害問題をめぐり、国連の人権理事会の専門家が7月下旬に来日して、元所属タレントからヒアリングをおこなう予定だと報じられている。

国際社会からも厳しい目が向けられる中、すでに被害を告白している元ジャニーズJr.の二本樹顕理さんが7月12日、弁護士ドットコムニュースのYouTubeライブに出演した。

芸能界とメディアの関係を長年取材するジャーナリスト、松谷創一郎さんとともに、これまでの性加害報道を振り返りながら、今後の被害者救済のあり方について議論を交わした。

約1時間のライブ放送を3本の記事に分けて、一部書き起こしで紹介する。3本目にあたるこの記事は、再発防止チームのヒアリングや今後の展開について語った部分だ。

【1本目】「自分の状況、異様に思えた」元ジャニーズJr.の二本樹顕理さんが退所を決めた瞬間 

【2本目】ジャニーズ事務所は「飴のまき方がうまい」松谷創一郎さんが語る芸能界の「義理と人情」

●ヒアリング、東京に来るよう言われた

司会:今後、被害者の救済をどうしていくべきなのか。また、ジャニーズ事務所は生まれ変わることができるのかという点について考えていきたいと思います。6月12日には、再発防止特別チームの設置も発表されています。二本樹さんはこのチームからコンタクトはあったんでしょうか。

二本樹顕理さん(以下、二本樹):先月の26日に調査チームからメールが届きまして、今現在調査を行っているので協力してほしいということで、そこから1カ月先になってしまったんですけれども、7月20日(木)の午前中にZoomで調査を行うことになりました。

松谷創一郎さん(以下、松谷):大阪に来てくれないんですね。

二本樹:来てくれないみたいです。はじめ、東京に来いと言われたんです。ちょっと予定もあって行けないので、何とかZoomでやってもらえないかとこちらから提案した。

松谷:差し支えない範囲でいいんですけど、誰からメールが来たんですか。あの3人の。

二本樹:特別チームの窓口を担当している弁護士事務所の方。

松谷:ということは、あの3人じゃないんですね。

二本樹:ではないですね。

松谷:それ、発表されてないですよね。

二本樹:(調査)当日は、お3方が出席されるらしいんですけれども。

松谷:それは林弁護士(*1)の弁護士事務所ということ?

(*1)再発防止特別チームの座長をつとめる元検事総長の林眞琴弁護士

二本樹:そういうことですね、はい。

松谷:要は、3人だけでやるわけじゃないということですね。窓口だけかもしれないけど。

二本樹:おそらくその3人体制なんじゃないですかね。ちょっとわからないんですけれども。

松谷:窓口で他の人が絡んでいるというのは、今知ったので驚いてるんですよ。

二本樹:もしかしたらその3人の中に含まれてる方なのかもしれないですけど、ちょっとわからない。林弁護士の部下の方か、わからないです。

司会:今の話聞いても、もし二本樹さんがZoomでというふうにおっしゃらなかったら、ないことになっちゃったんですかね。

二本樹:そうですね。それか永遠にスケジュール調整ということになってたかもしれないです。

松谷:元々3人でやるにはちょっと時間がかかる、まあ少ないだろうということは、みなさん指摘されてきたので、本当にこの流れでいくとどれだけ時間がかかるんだという話。

●ジャニーズ事務所は弱体化していく?

司会:松谷さんは、今後、どういうふうに展開していくと考えていらっしゃいますか。

松谷:私のあくまでも推定とか見立てなんですけど、夏ですよね。これから学校とかも夏休みに入って、芸能界的に夏はやっぱ繁忙期なんですよ。イベントもあるし、屋外イベントやフェスとかもあるし。あとは8月の終わりにはジャニーズ事務所のタレントがメインキャスターをつとめるチャリティー番組があって、他にも特番とかいっぱいあります。

ジャニーズの目論見としては、7月8月を乗り切るまでのことは考えてると思います。再発防止特別チームというのは、それを乗り切るための策で、6月上旬に会見しましたよね。3カ月が目安だというふうに見られるでしょう。

だから9月上旬に、中間か最終かはわからないんですけど、会見という流れになると思いますね。基本的にチームが事実を認めると思います。そこで補償の体制を作っていくと思うんですけれども、そこでかなり大きな潮目が変わると思います。

今動いているジャニーズの仕事は、ずいぶん前に決まったことなんですよ。たとえば、ドラマだと1年前にキャスティングが決まるので、今のこの状態を受けて来年のドラマのキャスティング、あるいは映画もそうですし、イベントですね。おそらくいろんなものがCMもそうですけど、だんだん契約をしない、というかたちでフェードアウトしていく。

だから、急激な弱体化というよりも、1年とか2年をかけてジャニーズ事務所はかなり力が弱まっていくし、同時に滝沢秀明さんが作った「TOBE」という会社があるので、割れるんじゃないですか。芸能人の方々は、当事者だから一番真剣に考えてます。当たり前ですけど、この状況に対して。

●幹部は総退陣しないとまずい

司会:ファンの方としてはもうちょっとちゃんと調査をして、何があったのか明らかにしてほしいという気持ちはきっとあると思うんですよね。

今現在、網羅的な調査はしないという方針を立てていますけれども、調査のあり方として現状のもので十分なんでしょうか。二本樹さんはどう考えますか。

二本樹:性加害があったという前提で調査を進める、と(チームが)言っていただいたことは大きな一歩だとは思いますし、会見の様子を見ていて、ご本人たちがそこにコミットする意気込みはあるのかなという印象はあったんですけれども、3人体制というところとか、どこまで踏み込んでいけるかというのは、疑問が残る部分はあるかと思っております。

司会:チームの調査によって、はたして自浄作用が働くことになるのか。松谷さんはどう考えてらっしゃいますか。

松谷:自浄作用を働かせなければ、おそらく信頼を失うでしょうね。一番大きなポイントとなるのは、白波瀬傑副社長です。白波瀬副社長は文春裁判にも出ていて、事実が認定されたということを知らないというにはさすがに到底言い逃れられないですよ。

藤島ジュリー景子社長に関しては、おそらく会長に退くと思うんですね。会長に引っ込んで院政を敷くという話になるのかもしれない。ただ、何にせよ、幹部は総退陣をするという方向に行かなければ、まずいだろうなと思います。

そのときに白波瀬さんの去就が一番注目されますけれども、問題はじゃあ次、誰を社長にするのかということなんですよ。要はおそらく補償することになってくるんだけども、被害者がどれだけいるかわからないですし、これからまた声が上がってくるかもしれないということを考えると、今後、ジャニーズ事務所はずっと補償に追われなければならない。その体制を作らなければいけない。

今のジャニーズ事務所が、それをできるかどうかというのは、私はちょっと微妙だと思っていて、補償をするために誰か別のところから社長に来てもらうのが一番いいんですよ。だけど、その人がどうもみつからない。それはそうですよね。火中の栗を拾いに行きたくないという状態にあるらしいですね。

●世界からの批判が始まる

司会:この先、まったく読めないですね。

松谷:読めないですし、我々が今はまだ予想できないようなことが起きるかもしれないです。

意外とこのまま何も起こらずにジャニーズがそのままになるだろうみたいなことを言う人がいるんですよ。統一教会問題とよく比較されて、統一教会問題は、自民党が縁を切るというかたちにしたが、ちゃんと解明されてないから元の木阿弥だねみたいなことを言うんですけど、ジャニーズ事務所に関しては、エンターテインメントで毎日いろんな人が見るようなものですよね。もっと言うと自民党より目立ってるわけです。ここがこの問題を曖昧にしたまま逃げ切れるわけがないと思ったほうがいいと思うんです。

そこに一つだけ一番大きなピースが欠けているとしたら、ファンだと思うんですよ。(司会が)さきほどファンの方は真相解明を期待されているとおっしゃいましたが、日本のジャニーズファンはほとんど期待してないですよ。

もちろん、署名活動をやった人もいるけれども、ほとんどのファンは期待をしてないです。曖昧なままにしておくし、そのままフェードアウトしていってほしいと言う。「自分の推しは被害に遭ってないよね」と私に聞いてくるわけですよ。

司会:願っているわけですね。

松谷:願っている。そういうフェーズの問題ではもちろんないわけです。BTSのファンだったら、ちゃんと声をあげますよ。ちゃんと声を上げて、会社に言います。これまでもそういうことがあったから。

だけど、ここまで来てジャニーズのファンが会社に対してちゃんとやれと言わないのは、僕は一番ジャニーズにとって致命傷になると思います。ジャニーズ事務所としては、ファンが一番怖いんですから。会社側はそこに甘えてもいるし、ファンもそれでいいと思ってる。

社会はこれを良しとしません。なぜかというと、エンターテインメントは今グローバルに流通するものなので、グローバルのキャンセルが、他の国々からのキャンセルが始まる。

司会:世界からの批判というのも、これから起こりうると松谷さんは見ていますか。

松谷:具体的にお話できませんけども、9月ぐらいからあるでしょう。ジャニーズが直接お金を取引してないけれども、海外の企業や団体が関係するイベントというのはたくさんあるんですよ。スポーツとかも含めてね。たくさん。そういったことで、水面下でいろんな動きが起きています。

司会:今回の一連の性加害報道というのは、BBCがある種火をつけて、日本のメディアもそれに倣って一緒に動いてきたところがありましたが、次はビジネスの本丸のところにも外圧が来る可能性があるというふうに見てらっしゃるんですね。

松谷:もうそんなのは起こると思いますよ。

●二本樹さん「変革が起きて欲しい」

司会:わかりました。まだまだ話を伺っていきたいところなんですが、そろそろお時間も近くなってきました。二本樹さん最後に感想、それから視聴者に向けたメッセージをいただけますでしょうか。

二本樹:本日参加させていただきまして、日本の芸能界の歴史を網羅できるような感じで、非常に有意義な時間であったんですけれども、本当にこの日本の芸能界というのが健全化してくれることを願っております。

性加害を放置するような国家と世界から見られてしまっては、本当にこれは日本人の倫理観が問われる問題だと思いますので、そこは本当に変わっていってほしい。変革が起きてほしいと願っています。引き続き、当事者の会としましても、声を上げ続けていきたいと思いますので、みなさま、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

司会:松谷さんはいかがでしたでしょうか。

松谷:今、二本樹さんがお話されたようなこととだいたい一緒なんですけども、私は海外生活を経験していないですけれども、海外のコンテンツに昔からすごく親しみがあって、私の場合はヨーロッパのコンテンツなんですけど、今回の性加害、性犯罪の問題は許されないんですよ。普通に考えて。だけど日本ではこんなことになっているというのが、本当に理解に苦しむんです。

ただむしろ逆に、日本のコンテンツや日本の文化にどっぷり浸かっている人にとって、これが許容し得ることであるのであれば、そのロジックを教えてほしいっていう感じです。なんでこれ許容できるんだろう。教えてほしいというのは皮肉ではなくて、むしろ不思議なんですよ。

どういうロジックがあるのかなっていうのは、ちょっと気になっていて。そろそろファンの方がジャニーズ事務所に対して声をあげないと、自分が好きな推しが破綻するリスクっていうのが増えてきますよ。だから自分ごととして考えたほうがいいんじゃないかなと思いますね。

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