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ジャニーズ性加害問題「声を上げなければ"推し"が破綻する」 二本樹顕理さんと松谷創一郎さんが激論
二本樹顕理さん(左)と松谷創一郎さん

ジャニーズ性加害問題「声を上げなければ"推し"が破綻する」 二本樹顕理さんと松谷創一郎さんが激論

ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川氏(享年87)による性加害問題が国際的な批判にさらされる中、元ジャニーズJr.で、被害を告発している二本樹顕理さんと、芸能界とメディアの関係を長年取材するジャーナリストの松谷創一郎さんが7月12日、弁護士ドットコムニュースのYouTubeライブに出演。これまでの性加害報道を振り返りながら、今後、被害者の救済のあり方について、議論をかわした。

奇しくもこの日、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が、被害を訴える当事者への聞き取り調査に乗り出すという共同通信の報道があった。ジャニーズ事務所が設置した外部専門家による「再発防止特別チーム」の調査も進む中、国連からはどのような見解が示されるか注目を集めそうだ。

●自分の置かれている状況が異様に思えた

二本樹さんは中学1年生だった1996年にジャニーズ事務所に入所して、1年半ほど活動。先輩グループのバックダンサーやジャニーズJr.の出演番組のためのレッスンを積み重ねる日々をおくっていた。

当時はジャニー氏から声をかけられた5〜6人のJr.が、都心のホテル2カ所に宿泊していた。二本樹さんは当初、月1回のペースでこの2カ所に行っていたが、だんだんと頻度が増え、週2〜3回は泊まっていたという。

当時、レッスン場はテレビ朝日の旧社屋の中にもあり、音楽番組『ミュージックステーション』の放送前や日曜日に練習していた。そうした場所にジャニー氏も来ており、Jr.を複数人、体を密着させるような形で座らせたり、腕や太ももに触れたりしていたという。

退所のきっかけとなったのは、山梨県での学園ドラマの撮影だった。そこで、初めてジャニーズ事務所以外の芸能プロダクションの同世代の子と共演し、自分の置かれている状況が異様に思えた。

「自分は性加害を通りながら、芸能界のお仕事をしている。でも他のプロダクションの子は、健全な形で活躍している。頭が冷えるというか目が覚める感覚を覚えて、ジャニーズ事務所の活動に戻りたくなくなっていた自分がいました」(二本樹さん)

●「何か訴えても無駄」被害者の絶望感

ジャニー喜多川氏の性加害をめぐる最初の報道は、1965年に『週刊サンケイ』であった。1980年代にはジャニー氏からの性加害を告白する本の出版や報道があり、2000年代には裁判でセクハラ行為についての記事の「真実相当性」が認められた。

なぜ、ここまで大きな問題とならず、見過ごされてきたのか。松谷さんは「告発」ではなく「暴露」という印象が強かったこと、訴訟も被害者が事務所を訴えたものではなかったことなどを理由に挙げた。

また、現役のタレントがジャニー氏についてすごく親しげに話す姿から、長年性加害の事実について確信を持てなかったが、BBCの報道で「グルーミング」という概念を知り、腑に落ちたという。

二本樹さんも「何か訴えても無駄なんだなっていう絶望感みたいなのを味わっていた」と話す。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の中には、事務所に対して声をあげたところ、メリー喜多川氏から「頭がおかしくなってしまった」といったことを言われた人もいたという。

ジャニーズ事務所の"メディアコントロール"について、松谷さんは「自分たちに何か不利なことが起きたらタレントを引き上げる。競合グループが『ミュージックステーション』に出られないという不自然なことが今もずっと続いている」と説明する。

最近では、音楽プロデューサーの松尾潔さんがラジオ番組で、ジャニーズ性加害問題に触れたことをめぐり、業務提携先の音楽プロダクション「スマイルカンパニー」から、マネジメント契約の解除を申し入れられたことが話題となっている。

松谷さんは「義理と人情をスマイルカンパニーと山下達郎さんは重んじたということ。私は実は意外性はなかった」と話す。

「解雇ではなく契約関係が終わったという話。もちろんそれは"制裁"ではあるけれども、むしろ我々が今からしなければいけないことは、松尾さんがこれからちゃんと仕事ができるような状況を業界が作ってあげること」(松谷さん)

●被害規模が矮小化されてしまうのではないか

6月12日には、ジャニーズ事務所が設置した外部専門家による「再発防止特別チーム」の記者会見がおこなわれた。二本樹さんは、6月26日にチームから調査に協力してほしい旨のメールが届き、7月20日にヒアリングを受ける予定だ。

二本樹さんは大阪在住だが、当初、東京に来るよう言われたという。そのため、「予定があり行けないため、なんとかZoomでやってもらえないか」と、二本樹さん側から提案したという。

二本樹さんはチームの調査について「網羅的な調査をおこなわないというふうに会見でおっしゃっていたので、被害規模が矮小化されてしまうのではないかと懸念している。性被害に遭われた方に最大限配慮することはもちろん重要ではあるけれども、センシティブという言葉に隠れてしまって、真相の解明がおこなわれない方向に進んでしまわないか、非常に心配している」と話した。

●二本樹さん「変革が起きてほしい」

ジャニーズ性加害問題の今後のシナリオについて、松谷さんは「チームが性加害の事実を認め、補償の体制を作っていくと思うが、そこでかなり大きな潮目が変わる」とみる。

「今動いているジャニーズの仕事は、随分前に決まったことなんです。今のこの状態を受けて、来年のドラマや映画のキャスティング、イベント、CMが、だんだん契約を更新しない形でフェードアウトしていく。急激な弱体化というより、1、2年かけてジャニーズ事務所は力が弱まっていくのではないか」

さらに、松谷さんは「ジャニーズファンが会社に対して声を上げないことが、ジャニーズ事務所にとって致命傷になる」と話す。

「ジャニーズとしてはファンが一番怖い。会社側はそこに甘えてもいるし、ファンもいいと思っている。社会はこれでよしとしません。エンターテイメントはグローバルに流通するものなので、他の国からのキャンセルが、9月くらいから起こるでしょう」

二本樹さんは最後に「日本の芸能界というのが健全化してくれることを願っています。世界から性加害を放置するような国家とみられてしまっては、日本人の倫理観が問われる問題。変革が起きてほしいし、当事者の会としても声を上げ続けていきたい」と支援を呼びかけた。

松谷さんは「海外では許されないことが、日本でこうなっていることが理解に苦しむ。ファンがジャニーズ事務所に対して声を上げないと、自分の好きな"推し"が破綻するリスクが増えてきます。自分ごととして考えたほうがいいのではないかと思います」と話した。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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