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埼京線で痴漢被害にあった女性弁護士「屈辱感、今も払拭できない」 男性に執行猶予付き判決
当時の心境を語る青木千恵子弁護士(2022年9月1日、東京都、弁護士ドットコム撮影)

埼京線で痴漢被害にあった女性弁護士「屈辱感、今も払拭できない」 男性に執行猶予付き判決

JR埼京線内の車内で痴漢をして逃げる際に女性にけがをさせたとして、強制わいせつ致傷の罪に問われた男性について、東京地裁は9月1日、懲役2年6カ月、執行猶予4年(求刑懲役3年)の有罪判決を言い渡した。

判決後、被害にあった青木千恵子弁護士が会見を開いた。自身も被害者支援に携わる立場から「性犯罪被害に遭うことは恥ずべきことではない。それを実践したいと思った」と自分の名前や顔を出して話すことを選んだ。

被害を振り返り、「自分の意思に反して、見ず知らずの人間の性的欲望の対象とされることは、私が意思を持つ人間と扱われていないことだと感じました。このとき感じた屈辱感は、今も払拭することができずにいます」と語った。

●事件の概要

被害者代理人の山本有司弁護士によると、男性は2020年10月6日の午後7時ごろ、十条駅から赤羽駅まで走行中の埼京線内で青木弁護士の尻を触った。当初、スカートの上から尻を触っていたが、徐々にエスカレートし、スカートをまくり上げて直接尻を触った。

電車が赤羽駅に到着した際に、青木弁護士は男性のボディバッグのひもをつかんで捕まえようとしたところ、男性が逃げようと反対方向にベルトを強く引いたため、青木弁護士は転倒し引きずられ、全治3週間のけがを負った。

その後、2人の男性が追跡し、警察官によって確保された。青木弁護士はのちにPTSDと診断された。

●「被害者のサポート体制をもっと充実させて」

青木弁護士は事件後、駅の階段から引きずり落とされて死ぬかもしれないと思ったことから、階段が怖くて利用できない状態が続いた。さらに、PTSDの影響から、25年間続けてきた司法試験予備校の講師や犯罪被害者支援などの弁護士業務を辞めざるを得なくなった。

「精神的ダメージには、より長期間、悩まされ続けました。法律を教えることは、法曹を志望する動機の一つでもあったため、安定収入を失った不安も大きかったですが、生きがいを感じていた教えるという仕事を失った喪失感も、大きなストレスになりました」と振り返る。

公判で裁判官や裁判員が真剣に話を聞いてくれたこと、そして、被告人男性の態度に変化があったことで、「心の傷が消えてなくなるわけではありません。それでもすごく心が軽くなったように感じています」。

捜査の中で苦しいこともあった。担当刑事や検事から「なぜ逃げなかったのか」「なぜ電車を降りなかったのか」などと問われたことだ。青木弁護士は「法律家として必要性は理解できる」としつつ、「捜査においても心の傷を重ねてしまう被害者のサポート体制をもっと充実させてほしい」と要望した。

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