通行中の女性が見知らぬ男からマスクを外される――。福岡市の中心部でそんな被害が相次いでいるという。
福岡市中央署は11月12日、次のような防犯メールを送信した。
「11月7日午後9時ころ、福岡市中央区天神の天神地下街で通行中の女性が後方から近づいてきた男にマスクを外される事案が発生しました。男は年齢20歳代、身長170センチ位、やせ型、茶色上衣、灰色ハンチング帽子を着用していました。他にも同様の事案が発生しています」
このメールはメディアにも取り上げられ、当たり前だが「気持ち悪い」などの感想があがっている。
痴漢の一種と言えそうだが、マスクを盗んだわけではないし、わいせつな行為とも言いづらそうだ。もしも出現したとして罪に問えるのだろうか。藤吉修崇弁護士に聞いた。
●一般用語よりも広い「暴行」概念
「暴行罪に該当しうるでしょう。暴行と言うと、殴る蹴るなど、暴力をイメージするかもしれませんが、それだけに限られたものではなく、身体接触が伴なわなくても成立することがあります」(藤吉弁護士)
有名な裁判例に、他人の頭や顔にお清めと称して食塩を振りかける行為を暴行としたものがある。
「刑法第208条の暴行は、人の身体に対する不法な有形力の行使をいうものであるが、〔……〕相手方において受忍すべきいわれのない、単に不快嫌悪の情を催させる行為といえどもこれに該当する」(福岡高判昭和46年10月11日)
ネットでは「ピアスやイヤリングをしていたら、引っかかって怪我をするかもしれない」との意見もあった。マスク外しをした結果、このような怪我が発生したら、暴行ではなく、傷害罪になる可能性があるという。
本人はただのイタズラのつもりかも知れないが、重大な結果を招く恐れもある。警察のメールや報道が抑止力になっているのか、11月26日現在、「マスク外し犯」の続報はない。このまま現れないことを祈りたい。